103号

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明治太政官制成立過程に関する研究 2 47各省大臣の単独副署が廃止され,全ての勅令に内閣総理大臣が副署することになった。これによって内閣総理大臣の職権は明示されたが,軍はその代わり,軍令第1号84によって,....

明治太政官制成立過程に関する研究 2 47各省大臣の単独副署が廃止され,全ての勅令に内閣総理大臣が副署することになった。これによって内閣総理大臣の職権は明示されたが,軍はその代わり,軍令第1号84によって,軍令は総理大臣の管轄外であることを明確にした。1907年(明治40年)9月12日制定の軍令第1号「軍令に関する件」は統帥権の独立を明確にした。更に元帥や軍事参議官にも帷幄上奏権を認めた。これ以降,純粋たる帷幄機関の代表である参謀総長や軍令部総長のみならず,国務大臣である陸軍大臣・海軍大臣までもが,本来は内閣の管轄である軍政一般に関する問題までを統帥権の一部と位置づけて帷幄上奏を行った事や,両大臣が軍部大臣現役武官制によって現職の大将・中将に限定されていた事から,軍部が政府・議会を軽視する風潮を生み,結果的に軍部の暴走を招く一因となったといわれてきた。その端緒はすでに記したように,太政官制初期から見られた。明治2年から機務事項は天皇直属に上奏すべしとすることが慣例化しており,大元帥に直属する軍組織にとって,軍制,軍政が一般政務から独立することは何ら問題とは感じていなかったはずである。憲法体制下においても,太政官制下における法令や慣例はそのまま有効であったからである。(3)太政官官等表に表れた武官の独立軍官僚組織の独立は従来,統帥権独立と同義に理解された85。統帥権は軍の指揮権であり,これは独立国であればいかなる国家でも不可欠な兵権である。日本語としての統帥権独立はさまざまに理解されてきた。軍令のみが軍政から独立することを指す場合,陸海軍省すべてが内閣から独立している場合,建前84 「軍令に関する件」軍令ニシテ公示ヲ要スルモノニハ上諭ヲ附シ親鈴ノ後御璽ヲ鈐シ主任ノ陸軍大臣海軍大臣年月日ヲ記入シ之ニ副ス これこそ軍自身が,軍令が超政治的意味を有すると宣言し,政府がそれを承認したものであった。85 統帥権独立は統帥権が政府の他の権力から独立していることを指す。大統領制は立法府と行政府が互いに牽制しあうが,軍令は大統領の下にあり,議会からは独立している。立法府と行政府が融合する議院内閣制の場合も統帥権は政府にある。立憲君主制の場合,元首である君主の下に統帥権はあるが,君主も憲法に規制を受けており,軍政,軍制は議会の承認を受ける。ただし,軍令は政府の指揮下にあるを常とする。