103号

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64 高知論叢 第103号3 剰余労働=超歴史説と単純流通前節で,蓄積財源をつくる労働を剰余労働と区別しない見方は,マルクスの古典派への解消である理由をといた。ところが,その古典派の所見にしたがえば,労働力....

64 高知論叢 第103号3 剰余労働=超歴史説と単純流通前節で,蓄積財源をつくる労働を剰余労働と区別しない見方は,マルクスの古典派への解消である理由をといた。ところが,その古典派の所見にしたがえば,労働力は,生産過程で,その自然的な属性の発揮によって,自動的に剰余価値を創造することになる。そのため,労働力が明示的に登場する以前の単純商品流通は,小商品生産者からなる売買関係の表現だと考えられがちになる。ひとは,剰余労働につらぬく社会的な契機を閑却する必然的な帰結として,単純な商品生産と資本主義とを,労働生産物だけの商品流通にもとづくかそれとも労働力商品が流通する基礎上での生産かの相違として認識しがちな傾向におちいる。そこには,商品流通の発展段階の差異だけが歴史的な要素としてみとめられ,労働力の生産的消費につらぬく生産条件の排他的所有の作用がみおとされるという根本欠陥がよこたわる。そこで,本節では,蓄積財源をつくる労働を剰余労働とみなす立場は,じつに,単純流通をもって理論上小商品生産者どうしの貨幣関係とみなす考え方と有機的なつながりをもつ事実を主張する。資本主義において,剰余労働は,生産条件からの労働者の分離に起因するというマルクスの理論にしたがえば,資本主義の重層性は,つぎのように理解される。すなわち,資本主義では,生産要素がすべて商品として生産過程にはいりこむ。しかも,労働力をふくむ発展した商品流通では,資本家と労働者とは,ともにたんなる商品所有者としてのみ相対することから,対等平等な関係にたつ。これにはんして,生産過程では,生産条件の排他的な所有をあらわす資本家は,圧縮された必要労働をこえて労働日を延長し剰余労働を強制する。生産過程では,単純流通とは正反対に,資本家と労働者は,支配と従属の階級関係にたつ。したがって,資本主義は,労働力をふくむ単純流通という基礎と支配従属関係があらわれる剰余価値生産という本質的機能との二つの契機からなりたつことになる。ちなみに,マルクスは,資本主義的生産様式の「二つの特徴」(Kapital, Ⅲ, S.886)として,第一に,「商品であることがその生産物の支配的で規定的な性格