103号

103号 page 92/154

電子ブックを開く

このページは 103号 の電子ブックに掲載されている92ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
86 高知論叢 第103号Ⅱ 財政システム -高知県内における過疎対策の新たな取り組みから「限界集落」を支える行財政システムを考えるには様々なアプローチの仕方があると思われるが,本章では過疎対策という視点か....

86 高知論叢 第103号Ⅱ 財政システム -高知県内における過疎対策の新たな取り組みから「限界集落」を支える行財政システムを考えるには様々なアプローチの仕方があると思われるが,本章では過疎対策という視点から考察をおこなう。「限界集落」を多く抱える自治体は,「限界自治体」として,財政維持が困難な状態に置かれることになる2。そうした自治体の財政を支える上で大きな役割を果たしてきたものとして,過疎対策を位置づけることができるためである。本章では,過疎対策の新たな方向性を概観した上で,新たな方向性が求められるようになった背景と,新しい過疎対策の意義について,高知県の取り組みを通じて検討することを課題とする。過疎対策は10年間の時限立法に基づいて行なわれているが,直近では2010年3月末が期限であり,民主党への政権交代があったことで,どのような形で改定されるのか注目が集まった。さしあたり現行法を延長することで落ち着いたが,延長によって大きく修正された点として,従来ハード事業にしか使えなかった過疎対策事業債がソフト事業にも適用できるようになったことがある。過疎法延長にともなう改正の背景には,新しい過疎対策としての「人の支援」の導入も合わせて,過疎対策の新たな方向性が示されるようになってきていることがある。新しい過疎法のもとでの過疎対策の検討と合わせて,「人の支援」についての分析も含め,制度の現状と課題を検討することを通じて,高齢化と過疎化が進む地域を支援するために求められている行財政的課題を明らかにする。1.過疎対策法の延長と新しい過疎対策手法(1)過疎対策の概要日本の過疎対策は,1970年4月に過疎地域対策緊急措置法が制定されることで始まった。同法は10年間の時限立法であったが,過疎対策立法は以後1980年に過疎地域振興特別措置法,1990年に過疎地域活性化特別措置法という形で延長された。さらに,2000年に成立した過疎地域自立促進特別措置法が2010年ま