104号

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32 高知論叢 第104号れてはいない。この「四方の海」は文部省が編纂した『明治天皇御集』54では,正述心緒という分類に収められている。正述心緒とは万葉集以来の和歌の区分であり,景物を媒介せず,心を直接表すと....

32 高知論叢 第104号れてはいない。この「四方の海」は文部省が編纂した『明治天皇御集』54では,正述心緒という分類に収められている。正述心緒とは万葉集以来の和歌の区分であり,景物を媒介せず,心を直接表すとされ,誇張的な傾向を強く持っている。実感的であるよりも観念的・芸能的,社交的な過剰さを持つとされている。日露開戦前に天皇がこの歌を詠んだとして,東京帝国大学講師の英国人が英訳して世界に紹介し,当時の米英首脳が感銘した,という逸話を佐佐木信綱は『明治天皇御集謹觧』51で述べている。明治38年中にこの歌が詠まれた事は事実であろう。しかし,日露開戦に際して平和を希求する意味を込めて詠んだとする事は疑わしい。明治天皇は生涯数万首の歌を詠んだと伝えられる。『明治天皇御集』には天皇が詠んだ歌なかで1687首が掲載されている。図5は同書に掲載されている明   日露戦時における戦争・軍に関する明治天皇御製の和歌の一部   明治37年国 ちはやぶる神の御代よりうけつげる国をおろそかに守るべしやは軍歌 武士のいさむ心はいくさうたうたふ声にもきゝしられけり軍旗 ますらをに旗をさづけていのるかな日の本の名をかゞやかすべく軍艦 荒波をけたてゝはしるいくさぶねいかなる仇かくだかざるべき なみ遠くてらすともし火かゝげつゝ仇まもるらむわがいくさぶね明治38年凱旋の時 外国にかばねさらしゝますらをの魂も都にけふかへるらむ凱旋観兵式にのぞみて 戦にかちてかへりしはものゝ勇ましくこそたちならびけれ凱旋観艦式に臨みて いさましくかちどきあげて沖つ浪かへりし船を見るぞうれしき   文部省『明治天皇御集』大正11年9月より引用