104号

104号 page 43/94

電子ブックを開く

このページは 104号 の電子ブックに掲載されている43ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
天皇親政体制の虚実41して已むを得ぬ事である。若し己が好む所は裁可し,好まざる所は裁可しないとすれば,之は専制君主と何等異なる所はない。」66以上の天皇の発言は,親裁を自ら否定しても,親裁を行ったことが明....

天皇親政体制の虚実41して已むを得ぬ事である。若し己が好む所は裁可し,好まざる所は裁可しないとすれば,之は専制君主と何等異なる所はない。」66以上の天皇の発言は,親裁を自ら否定しても,親裁を行ったことが明らかにされており,自己矛盾と弁解に充ちたものとなっている。天皇は高官人事に関して,総理大臣や国務大臣の人選は無論,軍人事に関しても軍内局の力関係を配慮して自ら決定している。外交に関して日本外交の大局を指示している。また松岡外相による日独伊三国同盟工作の失敗の責任追及と罷免要求を強行に行った。東条英機への篤い信頼と忠臣ぶりを高く評価した。これに対して旧皇道派とみなされた山下奉文らを陸軍中枢に招聘する事に,東条の意を酌んで反対した。2.26事件以降皇道派が後退し,陸軍統制派勢力が拡大したことは結果的に天皇の意志によるものであった。天皇は軍作戦行動に深く関り,作戦を逐次奏聞,裁可したため,結果として戦局の大局を見失った。大本営設置期の天皇の行動は親征と見なしても過言ではない。そのために,閣外に去り,情勢を客観的に見ることができた近衛文磨による,和平に関する上奏文を「近衛は極端な悲観論」者である,として却下した。原爆が数多く投下され,国土が壊滅しても,伊勢神宮を守る事を第一とし,「国体護持が出来なければ,戦争を継続し」一億玉砕することは「勿論だと答へた」(原爆投下後の8月12日の発言)以上のように,天皇は親裁を自らの意思で行い,統帥権を行使した。終戦に至る天皇は国体維持を第一に考えており,その国体とは皇室祭神や皇室の存在が第一義的であった。(3)昭和天皇と軍高官1)軍高官との発言記録『昭和天皇紀』は刊行されない可能性が大きいと言われている。今日まで系統的に昭和天皇の国事行為記録を収集したものはほとんどないが,2003年に刊