104号

104号 page 64/94

電子ブックを開く

このページは 104号 の電子ブックに掲載されている64ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
62 高知論叢 第104号られている。肯定派の意見1としては,TPP 参加による国際経済ルールの確立,成長戦略としての重要性,農業分野のグローバル化の積極的推進などTPP 参加の優位性を説いている。否定派の意見2とし....

62 高知論叢 第104号られている。肯定派の意見1としては,TPP 参加による国際経済ルールの確立,成長戦略としての重要性,農業分野のグローバル化の積極的推進などTPP 参加の優位性を説いている。否定派の意見2としては,TPP 参加により国際交渉力が低下すること,貿易の自由化によるデフレの進行,制度改革が余儀なくされることなどを問題点としてTPP への参加に対して疑問を呈している。このようにTPP を巡る議論は百出しており,利害関係者や経済団体などを巻き込み,日本中で流行と呼べるような動きにまで発展している。TPP への参加が日本全体に与える影響は盛んに議論されている一方,地方にどのような影響を与えるかについてはいまのところ充分な既存研究はない。岡田他(2011)では,農林水産省の試算に基づき,TPP の参加が新潟県の農業に及ぼす影響評価を行っている。北海道農政部(3 2010)では,北海道内の農業に与える影響を品目別に検討している。しかし,どちらも農業分野に対する影響に留まっており,製造業に対する影響評価は行っていない。TPP は包括的な経済協定であり,参加による影響は特定の産業にのみ影響を与えるものではない。仮に農業分野において加盟国内での競争の結果,生産額の減少が生じたとしても,製造業分野で生産額や輸出の増加によって経済成長が維持できるかもしれない。そのためTPP への参加による影響評価はできるだけ総合効果を捉える必要がある。また,TPP への参加はこうした特定産業のみの影響に留まらず,生産活動に必要な財貨・サービスの取引を通じて他の産業へも影響を及ぼす。本論で分析対象としている高知県では,既に農林水産省の試算や経済産業省の試算を基にして,高知県議会産業経済委員会においてTPP 参加による農業の生産額の減少が176億円,逆にTPP 不参加による工業の生産額の減少が153億円との試算を行っている。しかし,これは生産額の減少のみを対象とした試算であり,その減少が地域経済全体に与える影響を評価したものではない。本論では高知県におけるTPP の影響を個別産業分野ではなく地域経済全体1 例えば山下(2011)など2 例えば中野(2011)など3 北海道農政部はTPP の議論が始まる以前より,日豪EPA が締結されたときの影響を試算している。北海道農政部(2010)は同試算に基づくものであり,農林水産省の試算を下敷きにしていない。