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TPP参加が高知県経済に与える影響評価81このように地域別で影響を見た時,高知市地域及び物部川地域はTPP 参加により域内にプラスの影響がでるが,その他の地域ではマイナスの影響がでることが予想される。このこと....

TPP参加が高知県経済に与える影響評価81このように地域別で影響を見た時,高知市地域及び物部川地域はTPP 参加により域内にプラスの影響がでるが,その他の地域ではマイナスの影響がでることが予想される。このことからTPP 参加によるプラスの影響が都市部に集中し,郡部や中山間地域などがマイナスの影響を受ける構造が読み取れる。これはそもそも現在の高知県の産業構造が,高知市とその周辺部に製造業が集中し,その他の地域にはあまり集積が見られない産業構造をしているためである。このような高知県の産業構造の脆弱さがそのままTPP の効果として反映されている。高知県の製造業は高知市及びその周辺部に若干の集積が見られるものの,それ以外の地域では特徴的な産業はあまり見られず,また基盤が乏しいため前方・後方連関とも弱く,域内でマネーが循環する構造を築きづらいなどといった様々な課題を抱える。農業は平野部の比較的大規模な耕作地では機械化による効率化は進んでいるものの,中山間地域は地形の特性上,機械化・集約化が行いづらい。このように中山間地域,郡部といった地域では,そもそもの経済規模が小さく,TPP による影響はほとんど効果を及ぼさない14。第2節 2つのシナリオの課題15農水シナリオ,経産シナリオの共通の課題として挙げられる点は,試算により求められた生産額の減少額が過大であるとの指摘がある。まず農水シナリオについては,農林水産省の試算の前提条件に「主要農産品19品目について全世界を対象に直ちに関税撤廃を行い,何らの対策も講じない場合」16 とある。現在TPP は交渉中が9ヶ国,参加交渉中が3ヶ国の12ヶ国であるが,この前提条件では中国などからの輸入が含まれるなど,TPP 交渉で想定されているよ14 なお農林水産省の試算にはあるが,本論で取り扱っていない影響評価として,農地の持つ多面的機能の評価がある。そのため中山間地域に対する数量的に見ても過小評価であり,また環境保全などに与える影響から見ても過小評価である。TPP と多面的機能の評価については飯国(2011)などを参考のこと。15 鈴木(2011)では内閣府のGTAP モデルに対する検討も行い, 各シナリオに対して課題を投げかけている。16 内閣官房「資料2:EPA に関する各種試算p. 8」国家戦略室http://www.npu.go.jp/policy/policy08/index.html 2012/06/06取得