104号

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82 高知論叢 第104号りも非常に多くの地域を含むこととなる。同様に経産シナリオでも同様の過大推計が行われていると指摘できる。シナリオ公表時点より10年もの間,日本がなにも外交カードを切らず,一方で韓国が積....

82 高知論叢 第104号りも非常に多くの地域を含むこととなる。同様に経産シナリオでも同様の過大推計が行われていると指摘できる。シナリオ公表時点より10年もの間,日本がなにも外交カードを切らず,一方で韓国が積極的な外交政策を行ったという仮定条件は,あまりにも極端である。このように両者のシナリオは効果が最大になるように前提条件が設定されているが経済シミュレーションとして見るのであれば,極端な仮定を置き最悪の状態を想定することは十分容認されるべきである。限定的な条件であろうとも議論を行うたたき台として数量分析は必要であり,公表することにより議論が深まるのであれば,それは有意な分析であると言える。今回のTPP の議論で問題となるのは,様々な条件の設定を行ったシナリオを公表していない点である。農水シナリオであればTPP 参加国のみで関税の撤廃を行った際の試算結果の公表や,経産シナリオであれば大きな影響を持つ日中EPA などを締結した条件などでの試算結果の公表を行うべきである。本論においても,総合効果を評価する際に,経産シナリオの増分が過小となっている可能性を指摘しておく(図6)。経産シナリオはTPP 交渉がEU や中国とのFTA 締結やFTAAP の推進に向けて有利に働くという展望があり,それは現実的であると評価することが出来る。しかしこの輸出の増分は,経産シナリオにおいては数量的な評価がされていないため,輸出の増分をプラスに上乗せすることが出来なくなり,過小評価となってしまう。競争力の有無については公表されていないため,経済産業省以外ではこの試算を行うことが出来ない。このように,多種多様な議論を行う上でも,それに耐えうる試算の公表を望みたい。第3節 参加・不参加論で終わらないためにここまでの議論をまとめると,高知県の試算では農業分野及び工業分野に対して,直接効果によるマイナスの影響が,農業分野に対して176億円,工業分野に対して153億円であった。一方本論での試算では,産業連関分析による直接効果に間接効果を含めたマイナスの影響が,農業分野に対して185億円,工業分野に対して196億円であった。影響の差は,前提条件がほぼ同一であるこ