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TPP参加が高知県経済に与える影響評価83とから波及効果を含めた差と言える。波及効果を含めることにより,農業分野に対する影響よりも工業分野に対する影響が大きくなった。また影響の差は縮まることとなった。この....

TPP参加が高知県経済に与える影響評価83とから波及効果を含めた差と言える。波及効果を含めることにより,農業分野に対する影響よりも工業分野に対する影響が大きくなった。また影響の差は縮まることとなった。このような試算はTPP 参加・不参加の議論に対して,数量的な判断基準を与えてくれる面では非常に有用である。しかし,一方でその数字のみが一人歩きをし,感情的な議論へと導いてしまう可能性もある。参加・不参加の議論を数量的な判断からのみ行った場合,高知県では都市部にプラスの影響が,中山間地域にマイナスの影響が及ぶことを述べた。このことは地方における都市部と中山間部の新たな対立を生み出しかねない。ではこの数量的な判断基準をどのように評価するべきであろうか。筆者らはこれまで中山間地域をフィールド活動や各種統計から,高知県の中山間地域がいかに厳しい状況に追い込まれているかを肌で感じている。TPP参加により,これらの地域の衰退を急速に進める可能性がある。一方でTPP参加により製造業は少なくとも現状維持を図ることができ,かつ輸出増加の影響が地域経済を活性化させる可能性も考慮すると,参加による利点も否定は出来ない。筆者らはこれまで高知県内の企業に対する様々な調査を通じて,経済状況や立地に恵まれているとは言い難い高知県内において,厳しいながらも事業継続を行い,若年者の高知離れを防ぐために積極的な採用活動を行っている企業と出会った経験もある。TPP 参加によりこうした企業の活性化が図られ,若年者雇用の場が確保されることにより,持続可能な経済を築くことが出来るようになることも指摘しておかなければならないであろう。また,産業構造の観点からは,地域に根付いた産業の育成が,域内循環構造を高めるために必要な条件であり,高知県は特に意識して産業連関を高める努力が求められる地域であることを認識しなくてはならない。そのためにもTPP が地域に及ぼす影響を単純な地域間格差として見るのではなく,現状ですら危機的状況に陥っている中山間地域のケアをどのように行っていくのか,一極集中状況になりつつある製造業について現状の構造で良いのかといった議論へと繋げていくべきである。TPP は関税の原則撤廃や規制の撤廃など,参加することにより社会の構造を大きく変動させる協定である。そのため数量分析を行うことによる評価も両