105号

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党派的に正確な投票は可能か21政党から複数出馬している選挙区が1 つだけであることに注意が必要である。結語とインプリケーション地方議会議員選挙においては,候補者の党派を通じて,有権者は政党の存在を認識する....

党派的に正確な投票は可能か21政党から複数出馬している選挙区が1 つだけであることに注意が必要である。結語とインプリケーション地方議会議員選挙においては,候補者の党派を通じて,有権者は政党の存在を認識すると考えられる。しかし,本稿で明らかにしたように,候補者の党派は必ずしも正確に認識される訳ではない。政党の存在が自明視される国政選挙と比較すると,地方議会議員選挙には,このような違いが生じる余地が大きいはずである。本稿はその違いを奇貨として,いかなる場合において,有権者は政党をより正確に認識するのか探ることを試みた。先行研究によると,かつての衆議院議員総選挙で用いられてきた中選挙区制においては,有権者の投票に際して,政党評価だけではなく候補者評価の重要性が指摘されてきた。候補者数が増えると,同一政党からの立候補者も増え,政党よりも候補者を評価の基準とせざるを得なくなる。本稿の分析は,このような通説的な理解に異を唱えるものではない。候補者数が多くなると,政党以外の投票理由を挙げる回答者が増加する。また,政党以外の投票理由を挙げる場合,候補者の党派を認識する精度が低いことも確認した。しかしながら,候補者数が多くなると,その選択基準としての政党の重要性が低下するという知見を引き出すことはできなかった。分析の結果によると,むしろ第1 段階の候補者選択の基準として政党が重要となることを示唆している。候補者数が増えると,その選別は負担の大きい作業となる。そのため,有権者は候補者の党派をより正確に認識し,選り分ける「識別子」として活用する必要に迫られるのではないかと考えられる。また,冒頭で紹介した全国調査の結果から,選挙区定数が大きい市町村議会議員選挙においては,無所属の候補者にも政党のイメージを重ね合わせている有権者が多いと推定されることを想起されたい。この結果は有権者による党派認識の精度が低いことを示しているが,本稿の分析によると,候補者数が多くなるに従って有権者は政党を手掛かりに投票していると考えられ,全国調査の結果と必ずしも矛盾しない点も重要である。