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28 高知論叢 第105号を考慮に入れて金融資産及び経済的資本に対するリターンの経済的見通しを立てている多くの金融機関のリスク管理とも整合していない。? 損失が発生した場合,いつ損失事象が発生したのかが必ずしも明確ではない。発生損失モデルにおける減損損失の認識のハードル(すなわち,損失事象の結果としての客観的証拠)により,実務では大きなばらつきや適用上の問題が生じている。このばらつきにより,比較可能性が著しく損なわれている。? 一部のケースでは,当初予想が変わっていなくても,損失が損益に認識される。これは,当初予想信用損失が具体化することにより予想損失が「発生する」場合である。これは,実際には金融資産の質に変化がなかったとしても,悪化していると示すことになるため,誤解を与える財務情報となる。したがって,対象となる経済事象が忠実に表されていない。? 以前認識していた減損損失をどの時点で戻し入れるかが明確ではない。④ IAS 第39号と公開草案(2009)における減損損失の測定の違いIAS 第39号では,図表2 にまとめたように償却原価で計上されている金融資産,売却可能金融資産,取得原価で計上されている金融資産において減損損失の測定方法が異なる。一方,公開草案(2009)では,図表3 にまとめたようにIFRS 第9 号の区分にもとづき,償却原価で測定される金融商品についてのみ減損損失が測定されることになる。 図表2 IAS 第39号における減損損失の測定償却原価で計上されている金融資産見積将来キャッシュ・フローを当該金融資産の当初の実効金利で割り引いた現在価値と帳簿価額の差額売却可能金融資産公正価値と取得原価(資本性金融商品)または,償却原価(負債性商品)との差額(ただし,すでに減損損失として純損益に認識された公正価値の累積損失は控除する)取得原価で計上されている金融資産見積将来キャッシュ・フローを類似の金融資産の現在の市場利回りで割り引いた現在価値と帳簿価額の差額(出所:あずさ監査法人IFRS 本部『ケース・スタディ IFRS の金融商品会計』中央経済社2011年,65~66頁を参考に筆者作成)