105号

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党派的に正確な投票は可能か3得ることである。結論から述べると,地方議会議員選挙としては比較的に党派化が進んでいる本稿の事例においても,無視できない割合の有権者が候補者の党派を正しく認識していない。また....

党派的に正確な投票は可能か3得ることである。結論から述べると,地方議会議員選挙としては比較的に党派化が進んでいる本稿の事例においても,無視できない割合の有権者が候補者の党派を正しく認識していない。また,通説的な理解によると,候補者数が増えるに従って有権者の投票選択における政党要因の重要性が低くなるとされる。しかしながら,本稿の分析からは,候補者数が増えても有権者による候補者の党派認識がおろそかになる事実は確認されず,政党は有権者の意識において候補者を区分する「識別子」としての役割を一定程度果たしていると推測される。以下では,まず本稿の分析視角を説明し,データとして用いる2007年さいたま市有権者調査について紹介する(第1 節)。次に,調査の対象となったさいたま市における統一地方選挙の情勢と従属変数である回答者の党派認識の正確性を明らかにする(第2 節)。その上で,党派認識の正確性を左右する諸要因について検証する(第3 節)。1.不正確な党派認識いわゆる「正確な投票correct voting」をめぐる議論においては,自らの選好と合致する政党や候補者を正しく選ぶことができるかという点が焦点になっている(Lau and Redlawsk 1997など)3。本稿では,正しい政党の選択4 4 と正しい候補者への投票4 4 には距離がある点を指摘する。たとえ好みの政党があるとしても,その政党の候補者がだれであるか,いつも自明であるわけではない。日本の地方議会議員選挙のように,党派性の低い状況下で有権者は候補者の党派を正しく認識できるとは限らないのである。誤認識が存在する場合,その原因は何であろうか。また,本稿で扱うさいたま市議会や埼玉県議会の事例においては,選挙区が複数設置され,その定数は多様である。選挙区定数の違いは党派認識の正確性に影響を及ぼすのであろうか。本節では,先行研究の検討により,分析視角を示す。また,以下で使用するデータについても説明する。3 政策的な選好に基づく「正確な投票」の実現可能性については,堤・上神(近刊予定)でも議論している。