105号

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48 高知論叢 第105号態を在室していた幼児を含むその家族らに見せ続けるのは好ましくないと考え,筋弛緩剤(後述のミオブロック……評者注)で呼吸筋を弛緩させて窒息死させようと決意し,同日午後7 時ころ,事情を....

48 高知論叢 第105号態を在室していた幼児を含むその家族らに見せ続けるのは好ましくないと考え,筋弛緩剤(後述のミオブロック……評者注)で呼吸筋を弛緩させて窒息死させようと決意し,同日午後7 時ころ,事情を知らないA 准看護婦(原文ママ,以下同じ……評者注)に命じて,ミオブロック3 アンプルを,X の中心静脈に挿入されたカテーテルの点滴管の途中にある三方活栓から同静脈に注入させて,まもなくその呼吸を停止させ,同日午後7 時11分ころ,X を呼吸筋弛緩に基づく窒息により死亡させて殺害した。(2)第1 審判決の概要被告人側は,以下の点を争ったようである。すなわち,①ミオブロックはXの苦悶様呼吸(努力様呼吸)を鎮静化させる目的で被告人が自らその注射液1アンプルを生理食塩水ボトル(100ミリリットル)に注入して希釈したうえでこれを中心静脈カテーテル(CV)に接続して点滴による投与をしたが数分(約4 分ないし6 分)後,その呼吸が落ち着いた時点で点滴を中止しているから投与量は同ボトルの4 分の1 から3 分の1 程度にとどまる,② X の死因はミオブロックによる呼吸筋弛緩によるものではない,③被告人はX の家族の要請を受けて治療行為を中断して自然な死を迎えさせようとしたのみで殺意はなかった。原原審は,被告人側主張の①につき,被告人の指示でミオブロック3 アンプルを静脈注射したとの供述をしたA 准看護婦の供述を,証拠物の記載のほか重畳的に整合的な供述によって裏付けられてたもので,その内容はいずれも自然で,説得力があり,ミオブロックを自ら投与した点について一貫性が窺え,証言時においても,被告人を尊敬する態度は認められてもことさら陥れようとするような意図ないし関係等はみとめられないとして,その信用性を,動かしがたいと評価した。他方,被害者の苦悶様呼吸を鎮静化させる目的で,被告人自らミオブロックの注射液1 アンプルをICU に取りに行き,南2 階病棟のナースステーションにおいて生理食塩水ボトルに注入して希釈したうえ,X に点滴投与し,数分( 5 ,6 分)後,その呼吸が落ち着いた時点で点滴を中止したとする被告人の供述は,その内容自体不自然であること,A 供述ほか関係各証