105号

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川崎協同病院事件最高裁決定49拠にも整合しないこと,カルテにミオブロック3 アンプル静脈注射した旨記入すれば道義的にも法的にも責任を問われて弁解できなくなることは明らかであることから,虚偽の記入をする動機....

川崎協同病院事件最高裁決定49拠にも整合しないこと,カルテにミオブロック3 アンプル静脈注射した旨記入すれば道義的にも法的にも責任を問われて弁解できなくなることは明らかであることから,虚偽の記入をする動機も存すること,供述が変遷していることや,記憶の混乱を自認しているなど,記憶の曖昧さが窺えることなどに照らし,被告人の供述を信用することは困難というべきと評価した。また,被告人はカルテ記入時においては罪障感をもって虚偽記入したものと認めざるを得ないとの認定をした。被告人側主張②については,信用性を是認できるA 供述等の関係証拠から,X は,被告人から命じられたA によって,本件当日午後7 時ころ,ミオブロック3 アンプルを静脈注射され,その後まもなく呼吸が停止し,午後7 時11分ころ,その心臓が停止して死亡したこと,それまで鎮静剤を大量投与されてもなお苦悶様呼吸をしていたX が,ミオブロック投与後まもなく呼吸停止したのであるから,本件の死因は,このミオブロックの静脈内注入による呼吸筋弛緩による窒息と推認される。加えて,Y(D 大学医学部教授の医師……評者注)作成の鑑定書及び供述内容から,X は,本件抜管がなければ短くて1 週間,長くて数年の余命があったと推察されるところ,本件抜管により,気道確保を必要とする状態を放置することで低酸素血症をきたし,これにより余命は大幅に短縮されて,早くて2 ,3 時間,長くて1 週間程度(一番可能性が高いのは概ね2 ,3 日程度)と推定され,呼吸停止午後7 時3 分,心停止午後7 時11分を前提とすれば,呼吸停止時に低酸素血症がそれほど進行していなかった状態で強制的に呼吸停止されたと解することができるというのであり,このY 鑑定等は,専門的知見から,具体的根拠を述べて説得的に説明しているものであるから,十分に信用することができる。そうすると,本件の直接の死因は,ミオブロックの投与による呼吸筋弛緩・窒息と認定することができるとしている。他方,本件当日のX のカルテの記載については,その外形をみても乱雑な記載であり,抜管から死亡までの具体的経過を時間を確認するなどして正確に記録したものとは認め難いうえ,被告人の記憶のみによるものであり,大雑把な記載の仕方もあることから時刻の正確性については幅のある記載として扱うのが相当であるとし,カルテに「数分で呼吸?」と記入した意味はミオブロック