105号

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50 高知論叢 第105号点滴投与開始後4 ないし6 分で呼吸が弱まって点滴を停止し,さらに呼吸停止まで2 ,3 分あった旨供述するが,被告人の供述どおりの時系列であればそのように記載するのが自然であるのに,そのよ....

50 高知論叢 第105号点滴投与開始後4 ないし6 分で呼吸が弱まって点滴を停止し,さらに呼吸停止まで2 ,3 分あった旨供述するが,被告人の供述どおりの時系列であればそのように記載するのが自然であるのに,そのような記載はないこと,そもそも前記のとおり点滴投与したという被告人の弁解は虚偽と認められることから,経過に関する供述もまた信用することは困難であるというべきとして,被告人側の主張は退けた。被告人側主張③については,本件当日午後3 時から午後5 時までの間に,被告人はX の妻Z から,気管内チューブを抜いてほしいとの依頼を受け,管を抜けば呼吸状態が悪くなり,最期になること,Z 一人で決められることではないこと,家族で来られる人は全員来るようにとの旨を伝えたが,「夕方みんなが集まってからお願いします。」とZ が答えたことから,大変辛いことであるがやむを得ないと考えてその家族が集まってから抜管することを決意し,同日午後6 時前に,病室に入り,家族が集まっているところで「奥さんから管を抜いてほしいと要望が出ました。管を抜けば呼吸が落ちてきて最期になります。早ければ数分ということもありますので,看取ってあげて下さい。皆さん,覚悟はできていますか。それでよろしいでしょうか。」と尋ね,家族らの多くが無言でうなづいて異論を言うものがいなかったことから,被告人は,同日午後6 時3 分,X に経鼻挿管された気管内チューブを抜管したとするのが,被告人側の主張であった。被告人が記入したカルテ及び複数看護婦が記入した看護記録の内容等は,被告人側主張に整合的であるとした。他方,Z らX 家族の供述は,被告人側主張に反するものであった。すなわち,Z は,16日の昼間に本件病院に赴いたことも被告人に抜管を依頼したことも明確に否定したうえ,Xが本件病室に異動後,被告人から,鼻から管を挿入したままにしておくと手足が曲がり菌により肺炎を起こすので抜管したいから都合の良い日に家族皆集まって欲しい旨言われ,このとき気管内チューブの意味や抜管の弊害等について説明されなかったことから治療行為の枠内と理解し,他の家族らの都合を考えて16日に皆で赴くことに決まったと供述している。他の家族らの供述も,Zの供述に整合的であり,看護記録本文の14日午後3 時部分の記載内容とも符合している。