105号

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川崎協同病院事件最高裁決定51以上を根拠として原原審裁判所は,Z らの供述を,信用することができるとした。他方,被告人の供述については,Z から抜管の依頼を受けたとする時刻に,供述の変遷がみられること,被告....

川崎協同病院事件最高裁決定51以上を根拠として原原審裁判所は,Z らの供述を,信用することができるとした。他方,被告人の供述については,Z から抜管の依頼を受けたとする時刻に,供述の変遷がみられること,被告人は,抜管してお看取りすることを病室に同行した准看護婦C に伝えたと供述しているが,そのことがC 供述等と整合しないこと(C が記載したと窺われる看護記録の「fa(妻)より希望あり」「挿管チューブを抜管して欲しいとの事」との記入については,被告人から説明を受けたことを記入したもので,被告人から同説明を受けるまで,被害者の家族が抜管を希望している旨直接にも間接にも聞いたことがなく,被告人から被害者の妻ないし家族からの依頼である旨説明されたが,何故家族がそのような希望をしているのか理解できなかったとのC 供述等),抜管すれば確実に死に至るという極めて重大な事項であるにもかかわらず,突然Z から依頼されて了承し,他の医師等の意見も全く聞かず,依頼の遅くとも1 時間半後には,実行に移したという性急さ及び未だX 入院後2 週間しか経過していないことと併せ,内容自体不自然であることなどから,全面的には信用することができないとした。上記のような検討から,原原審裁判所は,「自己の考えによる方針を示唆し,不十分なやりとりをしただけで,それを家族らも了承したものと軽率にも速断し気管内チューブの抜管により穏やかに死亡させる意図でこれを実行したが,予想外の被害者の激しい苦悶様呼吸を目の当たりにして周章狼狽し,鎮痛剤の大量投与も奏功しない中で,呼吸停止に直結することを決意したことを認めることが出来る。」「既に検討したように,気道確保措置がとられなければ,本件の抜管のみでも被害者が死に至ることを認めることができ,また,人工呼吸器を付けずになされる本件のような筋弛緩剤投与も死に至らせる行為といえるところ,本件においては,前記のように予期せぬ展開から後者まで行われるに至ったという経過はあるものの,被害者を死亡させるという故意の連続性は維持されており,その下でこれらの行為が行われているのであるから,その全体を殺人の実行行為に当たるものと解することが相当であ」るとして,殺人罪についての実行行為性を肯定した。更に,本件抜管行為が,治療不可能で回復の見込みがなく死が不可避な末期