105号

105号 page 55/76

電子ブックを開く

このページは 105号 の電子ブックに掲載されている55ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
川崎協同病院事件最高裁決定53されることになる……。」「……この際の医師の判断はあくまでも医学的な治療の有効性等に限られるべきである。医師があるべき死の迎え方を患者に助言することはもちろん許されるが,そ....

川崎協同病院事件最高裁決定53されることになる……。」「……この際の医師の判断はあくまでも医学的な治療の有効性等に限られるべきである。医師があるべき死の迎え方を患者に助言することはもちろん許されるが,それはあくまでも参考意見に止めるべきであって,本人の死に方に関する価値判断を医師が患者に代わって行うことは相当ではないといわざるを得ない。」そして,本件につき,(1)回復不可能性及び死期の切迫については,被告人は,被害者の脳波等の検査すら実施していない等,被害者の回復の可能性や死期の切迫の程度を判断する十分な検査が尽くされていないこと,他の医師の意見等を徴して被害者の病状について慎重に検討を加えることをしていないし,Y 鑑定や同僚医師たちの供述からも「回復不可能で死期が切迫している場合」には当たらないとする,(2)患者本人の意思確認については,被告人は,家族らに対し,患者本人の意思について確認していないのみならず,患者の病状や本件抜管の意味等の説明すら十分にしていない。精神的に相当不安定となり医学的知識もない妻らに,9 割9 分植物状態になる,9 割9 分9 厘脳死状態などという不正確で,家族らの理解能力,精神状態等への配慮を欠いた不十分かつ不適切な説明しかしておらず,結局,本件抜管の意味さえ正確に伝わっていなかった。被告人が,家族らが治療中止を了解しているものと誤信していたことも,説明が不十分であること,患者本人の真意の追求を尽くしていないことの顕れであり,前記要件を満たしていないとする,(3)治療義務の限界については,被告人の本件抜管行為は,治療義務の限界を論じるほど治療を尽くしていない時点でなされたもので,早すぎる治療中止として非難を免れない,として,本件抜管行為については,その違法性を減弱させるような事情すら窺えないとして,被告人側の主張を退けた。最後に,量刑の事情においては,「被告人に対しては実刑をもって臨むことも十分考えられるというべき」としながらも,被告人のために斟酌すべき情状を勘案し,加えて,この種事犯に対する量刑については様々な考え方があり得る等から,主文のとおり科刑してその罪責を明確にしたうえ,その刑の執行を猶予することが相当とした。以上から,被告人に対して,懲役3 年(執行猶予5 年)の判決を言い渡した。