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54 高知論叢 第105号(3)控訴審判決の概要第1 審判決に対して,被告人は控訴したが,控訴審たる原審では,基本的に原原審と同様に,以下の点を争ったようである。①被告人は,ミオブロックは1 アンプルを点滴投与....

54 高知論叢 第105号(3)控訴審判決の概要第1 審判決に対して,被告人は控訴したが,控訴審たる原審では,基本的に原原審と同様に,以下の点を争ったようである。①被告人は,ミオブロックは1 アンプルを点滴投与したのであって,ミオブロック投与は殺人の実行行為ではなく,死因はミオブロックによる窒息ではない,②本件抜管時には,X の死期は切迫しており,被告人は治療中止についてのX の意思を推定するに足りる家族の要請に基づき本件抜管を行ったので違法性がないとして,原判決には事実誤認がある。控訴審2は,被告人側主張①につき,炭酸ガスナルコーシス3による呼吸停止の可能性も否定できないとの被告人側の主張については,二つの鑑定から,これを退けた。被告人に命じられて,ミオブロック3 アンプルをX に静脈注射したとするA 准看護婦の供述については,他供述から裏付けられているミオブロックを取りに行った事実と一連の流れであるミオブロックの静脈注射についての供述は信用でき,更に,原審及び当審における尋問を通じて全く動揺がみられず,同人の上記供述は信用できるとする。同人の,輸液ルートの左右についての供述に不正確さがあることについても,供述全体が信用できないとするものではないと判断した。被告人の,ミオブロック1 アンプルを自ら点滴注射したとの供述は,ミオブロックの本来の用法とは目的も投与方法も違うのに,同僚医師の「ミオブロックがいいよ。」という言葉だけでそれを思いついたという被告人供述は,不自然であり,信用できないとした。被告人側主張②については,先ず,原原審が,証拠価値を認めなかった被告人記載のカルテとカーデックスにつき,手書きのカルテが乱雑なのは当然であり,乱雑だからその内容が不正確ということはできず,カーデックスは,カルテの引写しのところも多いが,看護婦独自の記載もあり,その記載内容に沿う記憶があるとする看護婦2 名の供述があることから,それらの証拠価値を認めた。また,原原審が,家族の供述は互いに符合するとしていることにつき,家2 東京高判平成19年2 月28日刑集63巻11号2135頁,判タ1237号153頁以下。3 CO?の呼吸調節系への麻酔作用により換気が抑制されること。『南山堂医学大辞典』(南山堂,1998年)1327頁。