105号

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川崎協同病院事件最高裁決定55族間の供述の矛盾を指摘し,そもそも,何の意味か分からず子供5 名を含む家族全員病室に揃うというZ らの供述内容は不自然であることなどから,家族からの要請があったとする被告人の供....

川崎協同病院事件最高裁決定55族間の供述の矛盾を指摘し,そもそも,何の意味か分からず子供5 名を含む家族全員病室に揃うというZ らの供述内容は不自然であることなどから,家族からの要請があったとする被告人の供述は,Z らの原原審の認定に沿う供述に照らしても,なおこれを排斥することはできず,家族からの要請がなかったと認定するには合理的な疑いが残るといわざるを得ないとし,この意味で家族からの要請があったことを否定することはできないとした。そして,治療中止を適法とする根拠として,患者の自己決定権と医師の治療義務の限界があげられるが,いずれのアプローチにも解釈上の限界があり,尊厳死の問題を抜本的に解決するには,尊厳死法の制定ないしこれに代わり得るガイドラインの策定が必要であるとする。尊厳死の問題は,より広い視野の下で,国民的な合意の形成を図るべき事柄であるのに対し,裁判所は,当該刑事事件の限られた記録の中でのみ検討を行わざるを得ず,尊厳死に関する一般的な文献や鑑定的な学術意見等を参照することはできるが,いくら頑張ってみてもそれ以上のことはできない。尊厳死を適法とする場合も,実体的な要件のみが必要なのではなく,手続的な要件も欠かせない。この問題は,国を挙げて議論・検討するべきものであって,司法が抜本的な解決を図るような問題ではないとした。他方,国家機関としての裁判所が当該治療中止が殺人に当たると認める以上は,その合理的な理由を示さなければならないとし,その場合でも,まず一般的な要件を定立して,具体的な事案をこれに当てはめて結論を示すのではなく,具体的な事案の解決に必要な範囲で要件を仮定して検討することも許されるべきであるとする。本件は,仮定する前記二つのいずれのアプローチによっても適法とはなし得ない。そうすると,尊厳死の要件を仮に定立したとしても,それは,結局は,本件において結論を導き出すための不可欠の要件ではない傍論にすぎないのであって,傍論として示すのは却って不適切とさえいえようとの見解を示した。このような前提の上で,本件について,患者の自己決定権によるアプローチから,家族の意思が表明された場合は特段の事情がない限り患者本人の意思と同視すべきという見解もありうるが,この見解が前提とする患者が終末期状態であるという前提を本件は満たさず,家族からの要請の有無についても,原審