105号

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川崎協同病院事件最高裁決定57な面もある」とし,さらに,「ミオブロック投与の情状についてみると,……被告人としては追いつめられた状況において,同僚からミオブロック投与を助言されたことで本件投与に及んだと....

川崎協同病院事件最高裁決定57な面もある」とし,さらに,「ミオブロック投与の情状についてみると,……被告人としては追いつめられた状況において,同僚からミオブロック投与を助言されたことで本件投与に及んだという経緯をみれば,被告人は心ならずもミオブロック投与に及んでしまったものとみることができる」として,結論として,原判決を破棄し,被告人を懲役1 年6 月執行猶予3 年に処した。(4)被告人の上告理由の概要弁護人の上告趣意4は,意識がなく意思表示できない患者に憲法上保障されている自己決定権を否定した原判決は,憲法13条および憲法14条違反があるとの憲法違反,終末期医療に関係する高裁レヴェルの判決である名古屋高裁判決と原判決との間に,看過できない齟齬,不統一が存在するとの判例違反,判決に影響を及ぼす重大な事実誤認,また法令の解釈適用に重大な誤りがあることを主張する。すなわち,「……家族会議による家族全員の同意に基づく抜管の要請は,被告人が,患者X(刑集の原文はB であるが,本稿の表記に合わせる,以下同じ……評者注)と同居している家族のみならず家族全員の意向,患者の生き方,考え方等を良く知る者による患者の意思の推定等を手掛かりに患者Xの意思を探求した上で,治療を中止すべく同人の意思を推定するに足りると判断される。被告人は,家族からの強い要請に基づき,気管内チューブを抜管したものであり,本件抜管は,法律上許容される治療中止であったとすべきである」5,原判決が「殺意」を認定していることについて,「そもそも殺意は存在せず,延命行為の差し控えと医療行為の中止についての違法性の意識もない」6,また,被告人作成のカルテや看護婦らの看護記録や証言を「適材適所,ご都合主義的に採用」7しており,自由心証主義に反する,原判決が依拠した鑑定は「仮定の上に構築された,虚構に満ちた単なる確率論に基づく推論にすぎない」8等である。そして,「医師による延命治療の差し控え,治療行為の中止や尊厳死に刑4 「弁護人矢澤曻治の上告趣意」刑集63巻11号1904頁以下。5 前掲・注(4)1948頁。6 前掲・注(4)1989頁。7 前掲・注(4)1999頁。8 前掲・注(4)2021頁。