105号

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4 高知論叢 第105号1. 1. 有権者はどのように候補者を選ぶのか本稿の分析対象は,市議選の全てと県議選の半分が単記非移譲投票制における事例である。一般的に,このような選挙制度の特徴としては,同一政党から複....

4 高知論叢 第105号1. 1. 有権者はどのように候補者を選ぶのか本稿の分析対象は,市議選の全てと県議選の半分が単記非移譲投票制における事例である。一般的に,このような選挙制度の特徴としては,同一政党から複数の候補者が出馬する事例が多くなることを挙げられる。従って,有権者の投票行動における政党要因と候補者要因の相対的な重要性が問題となる。かつて衆議院議員総選挙で用いられてきた中選挙区制についても,このような観点から研究が進められてきた。選挙区定数の効果について指摘した初期の研究としては,Rochon(1981)を挙げられる。ロションは政党と候補者のいずれが投票の決定基準となるか決める要因として,文化に代わり,選挙制度の重要性を主張した。曰く,同一政党から立候補している候補者の数が増えると,候補者を重視する投票者が増える一方,政党を重視する投票者は減る(Table 3)。この効果は都市度や価値観,学歴をコントロールしても主要な決定要因として残る(Table 8)。また,リチャードソンは有権者の投票行動における候補者要因と政党要因を比較検討し,後者の相対的な重要性を指摘する(Richardson 1988)。その上で,2 つの要因を仲裁するために,有権者は好みの「政党の傘」の中から投票する候補者を選ぶというモデルを提案する。三宅はリチャードソンのモデルを発展させ,政党評価と候補者評価を用いる2 段階のモデルを提案し,検証している(三宅 1995)。「党派的傘モデル」によると,「投票者はまず政党を選び,ついで候補者を選ぶ。候補者選択を「党派の傘」の中に収めてしまっている」(33)。一方,「候補者評価モデル」によると,有権者の投票行動は候補者評価の形成過程と投票意図の形成過程に分けられる。「第一段階は候補者評価の形成過程であり,そこでは,候補者要因だけでなく,政党要因も作用する…第二段階は…すでに形成されている候補者評価が決定的な役割を果たす」(36-37)。党派的傘モデルと候補者評価モデルの違いは,前者が支持政党と投票した候補者の政党の一致を想定するのに対して,後者は必ずしも両者が一致しない場合も許容する点である。分析結果によると,(当然のことながら)候補者評価モデルの方が党派的傘モデルよりも適合率が高い。なお,候補者評価モデルにつ