105号

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58 高知論叢 第105号法を適用し,医師を殺人罪で立件することは,本来刑法が『謙抑的で補充的であるべき』であり,『最後の手段』であると考える国民の意識とは,逆行していると云わざるを得ない」9と批判している....

58 高知論叢 第105号法を適用し,医師を殺人罪で立件することは,本来刑法が『謙抑的で補充的であるべき』であり,『最後の手段』であると考える国民の意識とは,逆行していると云わざるを得ない」9と批判している。2.決定要旨「上告棄却。」「所論にかんがみ,気管内チューブの抜管行為の違法性に関し,職権で判断する。……所論は,被告人は,終末期にあった被害者について,被害者の意思を推定するに足りる家族からの強い要請に基づき,気管内チューブを抜管したものであり,本件抜管は,法律上許容される治療中止であると主張する。しかしながら,上記の事実経過によれば,被害者が気管支ぜん息の重積発作を起こして入院した後,本件抜管時までに,同人の余命等を判断するために必要とされる脳波等の検査は実施されておらず,発症からいまだ二週間の時点でもあり,その回復の可能性や余命について的確な判断を下せる状況にはなかったものと認められる。そして,被害者は,本件時,こん睡状態にあったものであるところ,本件気管内チューブの抜管は,被害者の回復をあきらめた家族からの要請に基づき行われたものであるが,その要請は上記の状況から認められるとおり被害者の病状等について適切な情報が伝えられた上でされたものではなく,上記抜管行為が被害者の推定的意思に基づくということもできない。以上によれば,上記抜管行為は,法律上許容される治療中止には当たらないというべきである。そうすると,本件における気管内チューブの抜管行為をミオブロックの投与行為と併せ殺人行為を構成するとした原判断は,正当である。」109 前掲・注(4)2056頁。10 最(三)決平成21年12月7 日刑集63巻11号1899頁以下,判時2066号159頁以下,判タ1316号147頁以下。