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党派的に正確な投票は可能か5いては,選挙区定数が大きくなると,候補者評価に対する支持政党の影響が低下し,候補者イメージや候補者認知度の効果が増加する(表2-4 )。候補者数が多くなると,有権者の候補者評価....

党派的に正確な投票は可能か5いては,選挙区定数が大きくなると,候補者評価に対する支持政党の影響が低下し,候補者イメージや候補者認知度の効果が増加する(表2-4 )。候補者数が多くなると,有権者の候補者評価における政党要因の比重が低下することを示している。また,候補者評価モデルの適合率は自民党候補者数の影響を受けないが,党派的傘モデルについては,自民党候補者数が増加すると,モデルの適合率が上昇する(表2-7)。つまり,最終的には候補者要因に基づいて投票選択が行われるにせよ,第1 段階における政党要因の重要性は候補者が増えるとむしろ上昇するとも解釈できる4。最近の研究成果としては,中選挙区制における有権者の投票行動をより精密に再検証した今井(2004)がある。自民党候補者間における選択の際には政党要因は全く効果を持たず,自民党と他党の候補者間の選択の際にのみ,候補者要因と並んで政党要因も影響を及ぼすことが明らかとされている。この分析結果は,政党間の選択の際には政党要因が,同じ政党の候補者間では候補者要因が,それぞれ役割を果たすと解釈できる点で,三宅による2 段階の候補者選定モデルと齟齬を来さない。先行研究の知見を要約すると,有権者は投票の基準として政党と候補者を使い分けており,同一政党から複数の候補者が出馬する場合には,政党要因だけではなく,候補者要因も重要となるとまとめられる。こうした議論から,有権者による党派認識の正確性に関する仮説を直接的に導き出すのは容易ではないが,本稿では,次の2 つを検証してみようと思う。?投票理由として候補者ではなく政党を挙げる回答者の方が,党派認識は正確である。?候補者数が増えても,回答者が党派を認識する精度は低下しない。4 三宅は,「候補者の中の自民党候補者数が多くなると,投票する候補者が自民党候補になる確率が上がる…さらに,その中に最高の評価を受ける候補者が存在する確率が上がるので,党派的傘モデルの適合率が上がる」と解釈する(53)。