105号

105号 page 8/76

電子ブックを開く

このページは 105号 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
6 高知論叢 第105号1 つ目の仮説については容易に理解されよう。2 つ目の仮説について敷衍すると,党派的傘モデルによれば,政党に基づく第1 段階の選別が依然として必要であることに変わりはなく,党派認識の正確....

6 高知論叢 第105号1 つ目の仮説については容易に理解されよう。2 つ目の仮説について敷衍すると,党派的傘モデルによれば,政党に基づく第1 段階の選別が依然として必要であることに変わりはなく,党派認識の正確さが下がることはないと考えられる。一方,候補者評価モデルによれば,候補者数が増えるにつれて同一政党からの立候補者数も増える場合,有権者の投票判断における政党要因の重要性が低下するので,党派認識の正確さは下がるはずである。2 つ目の仮説は党派的傘モデルに依拠しているが,どちらが正しいといえるのか。第3 節では,これらの予想の妥当性について,政党か候補者かという投票の理由と候補者の数を鍵変数として注目しつつ分析する。1. 2. 2007年さいたま市有権者調査本調査は2007年4 月8 日に投開票された統一地方選挙に関する質問文を中心に,さいたま市の有権者を対象として実施したものである。具体的には,さいたま市内の投票区をランダムに100抽出した後,さらに選挙人名簿を用いて各投票区から15人ずつランダムに抽出し(二段無作為抽出法),合計1,500人のサンプルに調査票を郵送した。回答期間は4 月12日から27日の間,回収された調査票の数は791である(回収率は52.7%)。本調査の特色は,投票した候補者の名前のみならず,その候補者が所属する政党についても質問しているので,回答者がどの程度正確に党派を認識しているのか検証できることにある。管見の限り,地方議会選挙を対象とするものとしては類例を見ない5。しかし,投票日の直後とはいえ,ある一定期間が経過した後の調査であり,回答者の記憶が曖昧となっている可能性がある。従って,回答者が候補者の党派を誤って回答する,あるいは分からないと回答する場合においても,投票日時点で正しく認識できていないとは必ずしも限らない点に注意が必要である。5 国政選挙を対象とするものとしては,JES II 調査においても有権者による候補者の党派認識の正確性を測定できる質問文が用意されている。その検証については,今後の課題としたい。