106号

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98 高知論叢 第106号地域の実情や農業委員会の体制等を考慮して,独自の運用を行っていることが挙げられる。A市の場合,30条の指導の段階を複数回もうけ,さらに指導と平行して受け手の掘り起こしをするなどして,....

98 高知論叢 第106号地域の実情や農業委員会の体制等を考慮して,独自の運用を行っていることが挙げられる。A市の場合,30条の指導の段階を複数回もうけ,さらに指導と平行して受け手の掘り起こしをするなどして,基本的に30条の段階での収束を目指している。B町は事務局体制が非常に不十分な中,事務局長が粘り強く所有者等と交渉し,また受け手を同時並行で確保できるよう努力するなどした結果,33条の利用計画の提出段階で解消に至っている。法が予定する通りにやったのではうまく行かない,あるいは現実的に実行不能という予測のもとに,両農業委員会がそれぞれ工夫をこらしている。B町の場合,遊休農地である旨の通知を出す段階で,既に受け手について見当がついていた。一方,A市は,受け手候補を掘り起こし中であったり,所有者等からのあっせん依頼があるのかはっきりしない中で通知がなされたようであるが,それでも勧告の時点までにはある程度見通しが立っている,ということが制度運用上の重要な点であるとみられる。そして,特定利用権の設定または措置命令について,現段階ではA市,B町とも適用を考えていない。34条より先には進まない,というのが改正農地法の遊休農地対策規定適用の「現段階」といえるのではないだろうか。特定利用権の設定については,規定が1970年代からあるにもかかわらず,2005年の農業経営基盤強化促進法改正で移ってくるまで一度も適用事例がなかったものであり,そのことは農地法に移っても基本的には越えられるものではなく,「適用」が課題として依然残っているということであろう。まして措置命令については,行政代執行を含む強権的な措置であり,多くの自治体が適用を躊躇していることは容易に想像できる32。A市,B町の実態をみて判断する限り,現段階では35条以下の規定が適用されるにいたる可能性は高くなく,現場の動きを見る限り,むしろ30条の段階でできる限り済ませ,やむを得ずそれ以下に進む場合でも予め道筋をつけた上で34条まででとどめておくというこ32 A市の場合,りんご園の病気・害虫防除のために緊急の必要性がある場合に今後適用される可能性はあるものとみられる。A市と同様の「緊急性」があると判断した市町村の中には適用を検討する市町村も出てくるかもしれない。ただし,緊急性が高い場合でも,代執行とは異なる形で実行される可能性もあるだろう。