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2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階99とが,現時点での適用の限界とみられる。それでは35条以下の規定の存在意義がないではないか,というとそうではないだろう。先述の繰り返しになるが33....

2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階99とが,現時点での適用の限界とみられる。それでは35条以下の規定の存在意義がないではないか,というとそうではないだろう。先述の繰り返しになるが33,法の実効性は,適用だけでなく抑止的機能も含めて考えるべきだからである。しかしもちろん,抑止力は適用事例があればより強くなる。特定利用権の設定にせよ,措置命令にせよ,私的所有権に対する強力な介入になるので,実際の適用は慎重にならざるを得ないが,例えば不在地主所有地等については積極的に適用を考えて行くべきではなかろうか。遊休農地が現実に問題となるのは,利用権設定等ができず効率的な農地利用が阻害される,周辺に具体的な悪影響が発生するためのであり,そういう農地は不在地主所有の場合も多いものと見受けられる。現にB町での適用事例は不在地主の所有地であった。現実には訴訟リスク等のハードルが高く,難しいと農業委員会もみているようであるが34,緊急性や必要性がリスクをとれるほどまで高まっていき,さらに都道府県あるいは市町村等他部局の同意が得られれば実現可能ではないか。改正農地法では農地を国民のための限られた資源,地域共通の資源であるとし,所有者等がその適正な利用を図ることを「責務」と位置づけている。農地が私的所有物であることは疑いがないが,同時に公的な面,共的な面から様々な影響を受けている存在であり,国レベルで,地域レベルで,有効利用を考えて行くべきものである。遊休化が進んでいくのを座視しているだけでは,やがて遊休農地の周辺も遊休化していくことになる。そうならないうちに,担い手が地域にいるうちに,思いきった法規定の適用を考えて行くべきではないか。5 まとめと今後の展望以上,農地法制のおける遊休農地対策規定の概要とその適用の実態を概観した。もちろん実態についてはさらに多くの事例に関する調査をする必要があり,今回調査したA市,B町も含め継続的な調査も必要である。33 中村・緒方前掲注21,268頁。34 安藤前掲注22,118頁-119頁。