106号

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2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階101して新規参入者を縛る問題点についても目を配らなければならないが,基盤強化法等の枠内で何かできないか,検討する余地はあるかもしれない。34条の....

2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階101して新規参入者を縛る問題点についても目を配らなければならないが,基盤強化法等の枠内で何かできないか,検討する余地はあるかもしれない。34条の「勧告」までをさしあたり農業委員会の守備範囲として,実際にどの程度まで指導,通知,勧告を行うべきか。法規定上は全ての農地について,必要がある場合には指導をし,指導の効果がなければ遊休農地である旨の通知をして利用計画の提出を求め,それでも遊休農地の解消につながらなければ勧告を出すことになっている。現在の農業委員会および事務局の体制でそれがどこまで可能か。青森県A市の農業委員会は法令上最大規模で,事務局職員も20名と他の委員会と比べて人的資源は充実しているが,事務局によると遊休農地対策の担当者は1 名とのことであった。高知県B町の農業委員会は事務局が2名であり,通常の法令業務をこなしていくのさえ困難が伴うものと思われる。そうした状況であっても丁寧な対応をせざるを得ないのが遊休農地対策であり,対策を実施して行く上での困難さが如実に浮かび上がってくる。では,できる範囲でやればよい,ということになるのかといえば,そうではなかろう。法規定上,農業委員会が手続きを省略することはできないのである。2009年農地法改正時になぜ農業委員会体制の充実が図られなかったのか検証し,法の適正執行に必要な体制づくりを地道に求め続けて行くことが必要である。遊休農地の発生要因について,本稿では深く検討できなかったが,例えば不在地主の存在が遊休農地対策の実施を困難にしていることは間違いないだろうし,既に指摘されているところである。改正農地法では所有者等が確知できない場合,公告によって対策を続行できる途を開いているが,そもそも所有者等が確知できないこと自体,大きな問題である。不在地主所有の遊休農地は,所有権という権利だけがあってその内実が空洞化し,利用が阻害される状況の典型である。筆者は共同漁業権について権利内実の空洞化について検討した36が,遊休農地の問題の根本には不在地主所有地の権利内実の空洞化があり,不在地主所有地を実態調査することは不可欠の課題である。と同時に,空洞化する所有権という権利の性質,あるいは権利そのもののあり方についても検討してい36 緒方賢一「沿岸海域の「共」的利用・管理と法」新保輝幸・松本充郎編『変容するコモンズ』(ナカニシヤ出版,2012年)43-66頁。