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102 高知論叢 第106号く必要がある。2009年に農地法およびその関連法が改正され既に3 年が過ぎた。同年に政権交代が起き,その後農業を巡ってはTPP(環太平洋連携パートナーシップ)への参加の是非を巡る議論や農業....

102 高知論叢 第106号く必要がある。2009年に農地法およびその関連法が改正され既に3 年が過ぎた。同年に政権交代が起き,その後農業を巡ってはTPP(環太平洋連携パートナーシップ)への参加の是非を巡る議論や農業者戸別所得補償政策の実施等が話題となった。一方,2011年に発生した東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一発電所事故は,我が国のあり方を根底から問い直し,産業立地,人口分布その他の国土利用や防災対策等,あらゆる面から再検討を迫るものであった。さらに2012年には再び政権交代が起こるなど,この3 年間の動きは非常に急激なものであったが,農地法改正後の農業,農村はどのように変化したのか。法改正から3 年が過ぎ,一定程度改正の影響が明確になってきているところであるが,例えば法人の農業参入について,順調に参入数が伸びてきてはいるものの,それほど大きな影響が農業・農村にあったのかというと,どうもそうはいえないのではないか。筆者が農地法改正後の農業,農村の現場を訪れて見ている限りでは,局地的に法人参入が増えているところはあるものの,農業や農村の様子に大きくかわったところは見受けられない。農林水産省は2012年12月に「農業経営構造の変化」37を発表しているが,先述のように例えば法人経営体の動向を見ると,法人経営体数はこの10年で2 倍以上に増加しているものの,法人の農地利用面積は19.3万ha,農地面積全体の4.2%に留まっており,農地の利用については未だに個別経営体が担っている状況である。その一方で,基幹的農業従事者の年齢階層別の動向を見ると,2010年の年齢構成では70代以上が最多階層になるなど,高齢化が進行し,今後の農業,農村は益々深刻な状況になっていくことが予測される。日本農業および農村は,静かに衰退を続けていることが分かる。そうした現状を考えると,改正農地法が主たる目的と位置づけた「農地の効率的利用」という段階はもう過ぎ去ろうとしていて,「農地そのものの確保」や「地域社会の存続」が法や政策の主たるターゲットになりつつあるのではなかと感じられる。その意味で,今後も遊休農地対策について,実際の対策と法政策決定の両方の現場でその動向を注視していく必要がある。37 農林水産省経営局公表。農林水産省Webサイトhttp://www.maff.go.jp/j/keiei/keiei/pdf/201212_kouzou_henka.pdf(2013年1 月参照)