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武官の人事評価に関する歴史的研究29れが考課する。諸隊では,連隊将校は連隊長が記し,連隊下士官は副官が管理する,大隊下士官は大隊副官が管理し大隊長が監察するとされた。以上の様に明治8 年にすでに軍人評価の....

武官の人事評価に関する歴史的研究29れが考課する。諸隊では,連隊将校は連隊長が記し,連隊下士官は副官が管理する,大隊下士官は大隊副官が管理し大隊長が監察するとされた。以上の様に明治8 年にすでに軍人評価の大枠が固まっていた。資料1,2は明治8 年に陸軍で示された考課表雛形である30。ここでは士官,下士官別にそれぞれの上官が考課を行い,調整官がこれを確認して署名,捺印する,とある。『将校必携作戦綱要』なる将校の手引書には,考課表ノ書式31が以下の様に示されている。「族籍,県,平民,誕生,陸軍出身,士官候補生,現官,除任,進級,陸軍歩兵,任官,年月,戦役,賞罰」が記入項目であり,上官所見は調整官所見から提出されたものに記載することと記されている32。各項目別の記載要領として,1. 性質,志操,気概,体格 2. 出身前の経歴,出身時の状況,何学を修めたか,徴兵如何 3. 勤務の勤勉か否か,成績,熱意 4. 学術,特有の技能 5. 義務心,品行 6. 家政,家計,家庭が円満か否か,動産,不動産,貧富の状況 7. 同僚との交際 8. 現在,将来の見込みなど詳細な個人情報項目が示された。また,将校であって士官学校首席でも安んじて進取の気力がなく,学術が退歩する場合,酒色におぼれる,しかし,中隊長の教育によって勤勉を取り戻したことや,将来性を記入すべし,戦役の功績,名声を記入すること,とされており,士官学校の成績において首席や次席の優秀者といえども,その後の考課によって進級が遅かった事例が多くあったことが強調されている。考課表調整官所見欄においては,以下の事項が必須とされた。「此所見ヲ調整補修スルハ,調整当時ノ感情ニ訴ヘスシテ,常ニ其人ノ挙動ニ注意シ,必要ナル事項ヲ見認スル毎ニ随時記入シ,苟モ美事ノ矯飾若クハ短所ノ隠匿ヲ許サス,要ハ他人ヲシテ恰モ其人ニ接シテ,其性質,才能,品行,風采,言語ヲ見ルカ如クナラサルヘカラス,故ニ第二條ニ掲クル処ハ,其大要ヲ示スモノニシテ,人ノ性質,技能ニ千差万別アルト共ニ,此表モ亦各色異様ヲ呈スルハ避クヘカラサ30 陸軍内文官(医局など)は書式を異にする考課表があった。(他部局には自然科学,医学,会計,会計学,商務学,経済学などの項目があった)31 『将校必携作戦綱要』研究会編 兵事雑誌社 1908年32 「上官所見 上官ノ所見ハ調整官ヨリ進達シタルモノニ記載スルモノニシテ調整官ノ収蔵スルモノハ之ヲ記載セサルモノトス」同上書