106号

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44 高知論叢 第106号その草稿を書いたのは人事課長であった。戦時下における戦費の過半は,糧食費を含む兵士の派遣経費であり,下士官の増加に比例して高官数が増加した訳ではなかった。(4)武官の職能的人事評価....

44 高知論叢 第106号その草稿を書いたのは人事課長であった。戦時下における戦費の過半は,糧食費を含む兵士の派遣経費であり,下士官の増加に比例して高官数が増加した訳ではなかった。(4)武官の職能的人事評価の枠組み武官の人事管理は,軍の階級すなわち将官,佐官, 尉官,准士官,下士官の区分と,親任官,勅任官,班任官,官吏外の現業・非常勤職員官など任用による区分,1等官から17等官に至る官吏階級制度と,叙勲による勲等制度という四種類の職能と職階を組み合わせたものであった。日本の武官人事制度は,硬直的な年功序列や情実人事を避け,厳正な人事考課によって人事評価を行うことを目指すものであった。日本の武官制度が職能的という所以は,階級ごとに職務能力を評価し,武官を格付けする事による。その中心に人事考課があり,進級,異動,配置によって組織の活性化が図られた。考課は上意下達ではなく,以下に述べるように“衆議”の結果が上奏され,裁可された。将官と雖も奏任官である部下達によって評価され,進級が決定された。戦時においては,戦地における直接的な武功が大きな考課のポイントである。しかし特段の武功がなくとも統率力,識見,胆力などが優れ,学歴,軍歴を積めば,将官になる可能性があり,大将人事にさえも叙勲や爵位が必須の要素ではなかった。無論,武功が叙勲と進級に繋がった例も多いが,武功は戦死に繋がり,死後特進が多かった事も武官ならではの特徴である。戦時,平時を問わず年間2度の人事考課と“衆議”による進級会議の決定が重要な意味を持った。武官の職能資格制度の枠組みを図5に示した。但し,日本の陸軍と海軍は全く別の官僚組織であり,同図は本来2つに分割して描かなければならない。高級武官職能資格制度の枠組の特質は,第1に,資格と役職の分離である。武官の定員は予算によって決定されている。役職ごとに必要な年限を経ないと上級階級に進級できないが,必要年数を経ても進級できない事が,佐官以上は特に顕著であった。資格,役職を組み合わせた高級武官人事の枠組みは,組織経営の視角からみても整備された仕組みであった。第2に,評価基準は当該階