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武官の人事評価に関する歴史的研究51来通り陸軍大臣の副署だけで済むように,帷幄上奏による裁可の形式を守ろうとした。軍は軍令第1号「軍令ニ関スル件」によって,軍令,軍制については従来の慣行と同様,軍の専決....

武官の人事評価に関する歴史的研究51来通り陸軍大臣の副署だけで済むように,帷幄上奏による裁可の形式を守ろうとした。軍は軍令第1号「軍令ニ関スル件」によって,軍令,軍制については従来の慣行と同様,軍の専決事項であると宣言した。同軍令第1号は明治40年9月に公布・施行され,軍令について規定した69。軍令のうち公布を要するものは,天皇の親署と御璽,陸海軍大臣の副署を必要とし,内閣総理大臣の副署は不要とした。以後,軍令,軍制に関する勅令は,文書面でも,それまでと同様に帷幄上奏がなされた。ただし,一般行政事務に属する軍官吏の官記は,議会を通過する軍政事項の裁可には内閣総理大臣の副署が必要であった。公式令第14条には以下の様に記されている。第十四条 親任式ヲ以テ任スル官ノ官記ニハ親署ノ後御璽ヲ鈐シ内閣総理大臣年月日ヲ記入シ之ニ副署ス宮内官ニ付テハ宮内大臣年月日ヲ記入シ之ニ副署ス2 内閣総理大臣ヲ任スルノ官記ニハ他ノ国務大臣又ハ内大臣,宮内大臣ヲ任スルノ官記ニハ内大臣年月日ヲ記入シ之ニ副署ス3 前二項ニ依ルモノノ外勅任官ノ官記ニハ御璽ヲ鈐シ内閣総理大臣年月日ヲ記入シ之ヲ奉ス宮内官ニ付テハ宮内大臣年月日ヲ記入シ之ヲ奉ス4 奏任官ノ官記ニハ内閣ノ印ヲ鈐シ内閣総理大臣年月日ヲ記入シ之ヲ宣ス宮内官ニ付テハ宮内省ノ印ヲ鈐シ宮内大臣年月日ヲ記入シ之ヲ宣ス上記の官記に関する公式令は,文官人事の場合には全く違和感がないが,武官人事に関して,内閣が関与することは形式のみとなり,文武官ともに違和感を持ち続けたであろう。軍令のみならず,軍制,軍政においても陸海軍の独立は明治初年からの慣例であり,大権に属する人事に文官が関与することはあり得ないことであった。従って将官の官記に内閣総理大臣の署名が付されることは,形式的事項にすぎなかったが,軍はその形式にさえもこだわり続けた。69 朕軍令ニ關スル件ヲ制定シ之カ施行ヲ命ス御璽 明治四十年九月十一日陸軍大臣寺?正毅?軍大臣齊藤實軍令第一號 第一條 陸軍ノ統帥ニ關シ勅定ヲ經タル規程ハ之ヲ軍令トス 第二條 軍令ニシテ公示ヲ要スルモノニハ上諭ヲ附シ親?ノ後御璽ヲ鈐シ主任ノ陸軍大臣軍大臣年月日ヲ記入シ之ニ副ス 第三條 軍令ノ公示ハ官報ヲ以テス 第四條 軍令ハ別段ノ施行時期ヲ定ムルモノノ外直ニ之ヲ施行ス