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52 高知論叢 第106号(2)陸海軍本省と親裁人事親裁の形式を分類すると,親任官人事は,親任式を行う場合と,親署,御璽の場合がある。勅任官人事は裁可,御璽である70。奏任官人事は上奏,裁可だけである。いずれ....

52 高知論叢 第106号(2)陸海軍本省と親裁人事親裁の形式を分類すると,親任官人事は,親任式を行う場合と,親署,御璽の場合がある。勅任官人事は裁可,御璽である70。奏任官人事は上奏,裁可だけである。いずれも本省人事局からの報告によって,陸海軍大臣を介して上奏される。その際本省人事局長の報告原稿は人事課長が草稿を書く。本省人事課は親任官人事に関しても意見を言うことができ,そのことが重要な意味を持っていた。課長は奏任官の意見を取りまとめるのみならず,進級草案を作る。課長の上司である親任官の進級に関しても,人事局長に対して意見を言い,そのことが人事局長による親任官推薦に大きな影響を与えた。従って本省人事課長は影の上奏者といっても過言ではない。人事のみならず,政策,予算,作戦等すべての重要政策に関して,草案起草者,立案者としての本省課長の権限は大きかった。日本の官僚組織はトップ下と,台形上部の事務局官僚が大きな役割を持っている。日本の官僚構造が台形型といわれる所以はそこにある。海軍省内局が作成した「海軍省人事課長中継」71 なる文書には,本省人事課,人事局内規として,進級人事事項すべてと人事行政すべてを管掌し,人事局第1課長は,海軍武官任用委員,武功調査委員,文官普通懲戒委員など人事に関する約20もの委員を兼務し,人事全般を仕切っていたことが記されている。その他海軍人事内規には,この年「侍従武官ノ交代」を3年として規則作成するよう先例集へ入れた。同文書には,人事課長が大臣の挨拶案草稿を書き,これを人事局長が決済したことも記されている。その内容は,進級会議の席上発言において尉官代用が増加し,必要な要員に対し不足しているというものであった72。それらの進級会議における大臣発言を起案したのは人事課長であった。このような官僚の実務,起案から決済までの形式は今日まで通常の役所業務と同様であり,陸海軍本省が特別ではなかった。課長が起案し,局長が決裁70 官記には御璽が鈴されるが,叙記には御璽(天皇御璽)ではなく国璽(大日本国璽)が鈴されることが慣例であった。71 海軍省「海軍省人事課長中継」昭和14年 防衛省防衛研究所史料所収72 海軍省「進級会議大臣口達覚」人事課長による大臣発言原案(昭和11年11月) 防衛省防衛研究所史料所収。