106号

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56 高知論叢 第106号合議があったが,陸海軍大臣間,陸海軍内局間,参謀本部,軍令部の各統帥部局間には調整,合議はなかった。人事に関する上奏事項の多くは即日,裁可されたが,軍務,作戦,人事とも無条件に裁可....

56 高知論叢 第106号合議があったが,陸海軍大臣間,陸海軍内局間,参謀本部,軍令部の各統帥部局間には調整,合議はなかった。人事に関する上奏事項の多くは即日,裁可されたが,軍務,作戦,人事とも無条件に裁可された訳ではなく,御下問の後,裁可されず,御上の逆鱗に触れて辞職に追い込まれた田中義一総理大臣や,しばらくは裁可されない山東撤兵の事例などがあった。また,2・26事件に関与した高官は重要人事から排除されたことは天皇の内意によるものであり,天皇の人事大権は不抜であった。検閲とは,勅命で定められたものであり,2か月に一度実施された組織考課の報告(奏聞)であった。特命検閲の他に恒例検閲があった。特命検閲とは,陸海軍ともに将官が,勅命によって特命検閲使となり,特命検閲冊子を天皇に奏上する事である。海軍は検閲を行なうために艦船を招集した。特命検閲使は艦船,部隊の現状,意見を復奏し,検閲の成績,訓示を奏上した。陸軍では,各組織の,軍紀,服務,教育,法規,動員計画,会計,経理,兵器,材料について自己評価したものを奏上した。海軍の書式は,艦隊,部隊の,軍紀,風紀,教育訓練,作戦準備,医務衛生,会計経理,服務,船体,兵器,機関等を奏上した。奏上書は上質厚紙に楷書で書かれたものであった。検閲使によって奏上される組織評価書に不可と記入された組織は無かったが,出撃準備が整わない艦船などは「未だ準備整わず」とだけ記された。検閲使が奏上する,個人将兵の考課表は,通常の考課表ではなく,総て優,可が附されたいずれも簡潔な書式のものであった。特命検閲使が天皇に提出する書類は,艦船,総ての部隊の膨大な量であり,そのすべてに天皇が目を通したはずはないが,上奏,裁可の手続を経ること自体,親裁であった事を意味する。7.大将人事と陸海軍の進級(1)陸海軍大将の歴任と期別人事陸海軍の大将は,将官のエリートコースを歩む者でも,容易には就任しえないポストであって,その時期における最高の人事評価が行われた人物達であった。大将ポストの選考は考課や統帥者の意向の他,当該年度の陸海軍予算に