106号

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70 高知論叢 第106号レツツアル課長,部長等ノ意思ノ儘ニ動カサレシ嫌アリ。上層威信ノ皆無ヲ表現セルモノト謂フベク歎ズベキコトナリトス」80大将人事には,天皇の内意と軍による考課が反映していた。明治初年から....

70 高知論叢 第106号レツツアル課長,部長等ノ意思ノ儘ニ動カサレシ嫌アリ。上層威信ノ皆無ヲ表現セルモノト謂フベク歎ズベキコトナリトス」80大将人事には,天皇の内意と軍による考課が反映していた。明治初年から昭和20年まで合計134名の大将の中で,陸大首席卒業者が大将に昇進した者は10名に過ぎなかった。大将となった大部分の者は首席ではなかった。大将昇進者の中で統帥部及び本省内局の高官を勤めた者は137名中87名であった。参謀本部,軍令部と内局勤務における評価が,その後の昇進に大きな要素となった事を裏付けている。陸軍内局未経験者は草創期39人中3人のみであり81,旧期26人の中で内局を経ていない者はおらず,内局出身者が大将昇進者の多数を占めている。陸軍元帥になった者は20名であり,陸軍大臣,教育総監の重責を担った者は30名余りであった。爵位を有する者は15名,司令長官は96名であり,大部分が司令長官を経験して大将に昇進している。大将経験者の中で総理大臣は9名,国務大臣は12名,陸軍大臣を歴任した者は31名であるが,1名を除き82,総理大臣経験者は,すべて陸軍大臣を経て総理大臣となった。海軍草創期において内局経験者は8人中,半数の4人のみである。ただし陸海軍内局と統帥部組織の位置づけは陸海軍で同一ではなかった83。昭和20年までの海軍大将77名中65名は内局の長,幹部を,52名は軍令部を経験している。海軍大将は指令長官及び艦長歴任者が多い。前述の様に,現役上長官および士官の進級抜擢は兵科ごとに上長官,士官の区分にしたがって所定の直系上官が行い,その進級は,候補決定名簿の列序順に,人事局に提出される。親任官のトップである大将人事はどのように決定されたのか。陸軍大将人事の原案は,奇数の三長官(陸軍大臣,参謀総長,教育80 前掲『本庄日記』289頁81 ここでいう軍事内局とは本省,参謀本部の内部部局を示す広義の意味である。参謀本部,軍令部は平時においても政府から独立したが,軍本省の内局も独立するとみなされ,したがって軍事内局は政府機関でありながら,政府から実質的に独立した機関となった。軍内局(長)経験者でなければ親任官への進級の道は閉ざされた。また内局での仕事の評価が大将への進級を左右した。82 小磯国昭は陸軍次官83 参謀本部による上奏は陸軍大臣を経ないが,軍令部からの上奏は海軍大臣の承認を経なければならない事が昭和初期まで続いた。