106号

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武官の人事評価に関する歴史的研究71総監)の合議によって人事評価を行い,進級の原案が決定され,上奏されるとされてきた。重要な親任官は上奏前に侍従武官を通じて内々奏,内奏され,しかる後に上奏,裁可される。....

武官の人事評価に関する歴史的研究71総監)の合議によって人事評価を行い,進級の原案が決定され,上奏されるとされてきた。重要な親任官は上奏前に侍従武官を通じて内々奏,内奏され,しかる後に上奏,裁可される。しかし,三長官による進級会議の原案は人事内局が作成する。勅任官である本省課長クラスが,上官である親任官人事に関しても内局部局員の意見を人事局長(親任官)に伝え,そのことが奏上案に大きな影響を与えた。進級会議においては個々人の固有名詞を挙げて進級,停年,退役について決定する。その原案は親任官である人事局長が進級会議に提案するが,その原案は勅任官である本省人事課長が作成する。以下は,人事課長が人事局長に提出した進級会議報告の草稿「昭和5年海軍人事局説明草稿」の一部である。進級会議席上の人事局長説明草稿は同省人事課長の手になるものであった。進級会議における人事局長草稿によって,大将進級が可能か,中将のままで停年を迎えるかを左右した会議記録を示そう。海軍省人事局長は大将進級候補であった長沢中将について以下のように評価結果を述べた。「長沢中将,イハユル口八丁手八丁ノ有能ナル人デアリ,相当実績マリ,マタ到ル所ニ間ニ合フ働キ手デアリマスガ,上ノホウニ偉才,傑物ノ揃フテ居ラレルノト,下ヨリ又中村,末次,南少将ノ如キガ上ッテ来ラレル関係上当年アタリガ現役ヲ去ラレルノ不得モノト考へラレマス」84海軍省人事局による評価報告書「飯田中将の評価について」には以下のように記されている。「飯田中将 果敢ナル闘将,練達ナル実地家トシテ多ク得難キ緯材ナルハ申迄モアリマセンガ中将ニ昇進以来満二年ヲ経過シ上ノ方ニ大谷,山本,大角ノ三中将アル限リハ容易ニ親補官ノ位置ニ進ムコト能ハス…御気ノ毒デハアリマスガ現役ヲ去ラルベキ時期ガ既ニ到来 後輩多数ノ意見トシテハ中将ハ戦陣ノ部将ニシテ主将タル器ニアラストナス」85 これは,中将から大将への進級案について,個々の人物評価原案を人事課長が作成した事例である。人事局長は「お気の毒ではありますが」と述べて「後輩多数の意見として」大将の器ではないと明言して引導を渡している。後輩多数とは課長,佐官以下による,上官の進級への意見の事である。この様に人事局は,進級,定員の枠,競84 海軍省「昭和5年海軍人事局説明草稿」防衛省防衛研究所史料所収85 同上史料