106号

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2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階77(平成元)年の農用地利用増進法改正からである7。それ以前には遊休農地に限らず農地一般の有効利用を図るための措置,規定があった。1969(昭和44)....

2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階77(平成元)年の農用地利用増進法改正からである7。それ以前には遊休農地に限らず農地一般の有効利用を図るための措置,規定があった。1969(昭和44)年に農業振興地域の整備に関する法律8が制定された際に,農用地区域内の農地が農用地利用計画で指定されている用途に供されていない場合に,指定通りの用に供するよう市町村長が勧告し,勧告に従わない場合に市町村長が第三者への所有権等の移転または設定について協議するよう勧告し,それにも従わない場合には都道府知事の調停を申請するという仕組みを整えた9。これは,市町村が策定した農用地利用計画において指定された用途とは異なる利用が行われている場合に,指定に合致した利用を行うよう促す措置である。区域内にある遊休農地についても勧告,調停の対象となりうるという意味で,遊休農地対策の規定ともいえる。もっとも,農振法が都市計画法に対抗して制定されたという立法の趣旨や農用地区域の指定が農地の確保という意味合いでなされるということに鑑みれば,転用防止が制度の主たる意義であり,農用地利用計画においても,遊休農地対策というよりも転用防止に重きが置かれていたとみるべきであろう。農振法案の上程に際して農林省農政局が作成した想定問答では,農用地利用計画の効果として上記の勧告,調停が挙げられているが,耕作放棄ではなく転用が念頭にあったようである10。農振法上の勧告,調停の措置規定には,1975(昭和50)年の農振法改正において特定利用権の設定に関する知事裁定の規定が追加された。こちらは,現況が農用地でありながら耕作等に利用されない土地に関する利用の確保を図るというものであった。特定利用権は,文字通り所有権ではなく賃借権等の「利用権」であり,かつ個人ではなく集団的な利用のためという限定があるが,都道7 関谷俊作『日本の農地制度(新版)』(農政調査会 2002年)318頁。8 昭和44年法律第58号。以下本稿では「農振法」とする。9 関谷前掲注7,131頁。10 「農業振興地域の整備に関する法律案想定問答(未定稿)(抄)」昭和44年3月農林省農政局。農地制度史編纂委員会『戦後農地制度資料 第10巻』(農政調査会 1987年)841-842頁。問54として農用地利用計画とはどのようなものか,またその効果如何とあり,効果として,(1)指定用途に供すべきと勧告(2)勧告に従わない場合に調停が利用可能(3)農用地区域内での土地利用の確保(4)指定用途の厳守,転用阻止を挙げている。