106号

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6 高知論叢 第106号各藩においてもそれぞれ独自に官位が定められてきた。その様式は各藩で様々であるが,基本事項は共通しており,各藩の官位は明治以降に継承された。各藩は幕府官制を模した独自の官位相当表があ....

6 高知論叢 第106号各藩においてもそれぞれ独自に官位が定められてきた。その様式は各藩で様々であるが,基本事項は共通しており,各藩の官位は明治以降に継承された。各藩は幕府官制を模した独自の官位相当表があった。藩政時代においては諸法度によって大枠が決められたが,藩の官位制は各藩任意の仕様で行われた。諸藩においては,藩独自の官位が定められた。以下は土佐藩の官制の事例である。幕藩体制下の土佐藩における官位と明治以降の高知藩,高知県の官位への移行表と嫡子官位表を表2,3 に示した。幕末から数年間で旧藩と新政府の官位が併合された。旧土佐藩時代の官制との対比を示す『士族年譜』7 によると,跡目相続し石高を賜った年月日,石高数,身分,婚姻,恩賞,藩主から下賜された物品と金子,江戸表への出仕,賞罰を受けた場合はその詳細,以上について年を追って隠居して跡目を長子か養子に譲るまで記入されている。それらの大部分は明治以降においても継承されてきた。土佐藩は上士と下士の差別化が徹底して行われており,身分制度は切米,服制,居住区域等と連動していた。40年以上郷士であった家は,特別に藩から名字帯刀が認められ,郷士の株を売った者は地下人と呼ばれた。表2に示した官位の新旧対照表では,四等士族までが上士であり五等士族上下が郷士であった。旧土佐藩時代士族の嫡子・養育人は三等以下を境にして厳然たる差異があり,四等以下の嫡子は三等以上になることはない。逆に三等以上の嫡子・養育人は生まれながらにして三等以上である。足軽以下は旧職階では五等無刀とされ,新職階では等外とされた。官吏以下の労務職の系譜につながる官吏が等外官であり,その系譜は五等無刀の足軽につながる。旧土佐藩の下級藩士は,白札,郷士,徒士,徒士格,下席組外,古足軽,足軽,下足軽,庄屋というように細分化されており,新高知藩もそれを継承した。幕末の藩政改革によって,藩組織は富国強兵策を意図した新たな組織,開成館に編制替えした。開成館には新たな人材が登用され,適材適所によって,身分が低いが学問と商才にたけた岩崎弥太郎や,教養と実力がある佐々木高行ら7 「上席年譜」「下席年譜」「郷士年譜」それぞれ三等士族上席,四等士族下席の年譜。高知県立図書館蔵