106号

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78 高知論叢 第106号府県知事の裁定によって権利設定を行いうるとされた点で,強制的に権利設定がなされるという意味で画期的なものであった11。1989(平成元)年の農用地利用増進法改正では,遊休農地に関する措置....

78 高知論叢 第106号府県知事の裁定によって権利設定を行いうるとされた点で,強制的に権利設定がなされるという意味で画期的なものであった11。1989(平成元)年の農用地利用増進法改正では,遊休農地に関する措置が改正の主たる内容の一つとされ,法律案提案の理由説明で第三の主要内容(主な内容は第三まで)として掲げられた12。遊休農地に関する措置を新たに置く背景として,1985年には135,000haであった耕作放棄地面積が1990年には217,000haへと急増していたということがあり,遊休農地の解消とその有効利用を図るため,正当事由なく耕作放棄している者に対して農業委員会が指導し,改善がみられない場合には市町村長が勧告を行い,勧告に従わない場合には農地保有合理化法人が買い入れ等の協議を経て規模拡大農家に売却するとされた13。遊休農地に関する措置の規定は,その後1993(平成5 )年に農用地利用増進法が農業経営基盤強化促進法に改正される際にも引き継がれた14。基盤強化法27条に遊休農地に関する措置の規定が置かれ,農業委員会の指導( 1 項),市町村長の勧告( 3 項),農地保有合理化法人による買入又は借受けの協議の通知( 4 項)等が規定された。協議通知を受けた所有者等は正当事由なくこれを拒んではならないとされたが(同条5 項),罰則等はない。また農地保有合理化法人の認定農業者への売り渡し,貸し出しについても努力規定(同条6 項)となっていた。経営基盤強化促進法上の遊休農地に関する措置について,その運用状況は,農業委員会による指導は年間数千件程度あったが,市町村長の勧告以下の規定は実施されなかったものとみられる15。11 関谷前掲注7,133頁および318頁。12 「農用地利用増進法の一部を改正する法律案提案理由説明」第114回国会平成元年3月農林水産省。農地制度資料編さん委員会『農地制度資料 第3 巻』(農政調査会 1999年)122頁。13 「農用地利用増進法の一部を改正する法律案提案理由補足説明」農地制度資料編さん委員会前掲注12,123頁。14 平成5 年の農用地利用増進法改正により農業経営基盤強化促進法と名称を改めた(平成5 年法律第70号)。以下本稿では「基盤強化法」とする。15 関谷前掲注7,320頁。