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2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階83もゼロであった20。筆者は法規定が存在することによる抑止的機能の意義を強調したが21基盤強化法の2005年改正以前においても「指導」のみしか行われて....

2009年農地法改正における遊休農地対策規定とその適用の現段階83もゼロであった20。筆者は法規定が存在することによる抑止的機能の意義を強調したが21基盤強化法の2005年改正以前においても「指導」のみしか行われていなかった事実が指摘されており22,旧法時代に法の発動が具体的にはほとんど行われなかったという点は確認しておくべきであろう。一方,改正農地法移行後,「指導」は2010年には34,000件あまり,6,442.6haと大幅に増え,2011年には139,947件,21,620ha へとさらに増えている23。旧基盤強化法時と比べると実に10倍以上の伸びとなっている。先述したように,遊休農地である旨の指導は,旧基盤強化法では,市町村が基本構想の区域内にある「要活用農地」について必要な措置を講ずるものとされていたが,改正農地法では農業委員会は管内の全ての農地についてその利用状況を調査し,必要な措置を講ずることとなっており24,調査 指導対象農地の範囲が一挙に増えたことが要因としてあるが,ともかくも,法改正後に件数が桁違いに伸びている事実があり,法改正が直接に影響していると見ることができる。2009年改正の影響は上記のような遊休農地の把握,指導に留まっていない。改正法施行後の2010年には法32条の遊休農地である旨の通知が青森県で2 件出され,翌2011年には全国で計2,569件の通知がなされた。通知の内容が具体的にどうであるのか,あるいは次の段階に進んでいくのか等について確認する必要があるが,法改正によって旧基盤強化法時代とは違った段階に入りつつあることが実感できる数字である。2010年の青森県では「通知」だけでなく34条の「勧告」も2 件出されており,こうしたことから,少なくとも統計上嚆矢とみられる青森県の実態がどのようなものであるか,現地の実態を確認しておくこ20 前掲注19参照。むろん,27条の5 以下の裁定の申請等の規定についても同様である。21 中村正俊・緒方賢一「改正農地法と農業委員会の現実的課題」原田純孝編著『地域農業の再生と農地制度』(農山漁村文化協会,2011年)268頁。22 安藤光義「農地保有の変容と耕作放棄地・不在地主問題」原田純孝編著『地域農業の再生と農地制度』(農山漁村文化協会,2011年)118頁。ただ,特定利用権設定や措置命令について,その適用を検討する農業委員会あるいは事務局はあった。緒方賢一「農業委員会の今日的役割」『高知論叢』96号(高知大学経済学会 2009年)76頁参照。23 なお,統計の取り方が年度から暦年に変更されている。ただし2010年に関しては2009年12月15日の改正農地法施行時から2010年12月末までとなっている。24 改正農地法30条。