高知論叢107号

高知論叢107号 page 107/180

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日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究68ナラ外交ヲヤッテ見ル 戦争主 外交従ト見ルユルモ 実ハ外交手段ヲ取ル中ズット戦争準備ヲ為ス趣旨ナリト解ス 外交的打開シ努ム 出来スハ戦争ヲヤル意味ト解ス ....

日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究68ナラ外交ヲヤッテ見ル 戦争主 外交従ト見ルユルモ 実ハ外交手段ヲ取ル中ズット戦争準備ヲ為ス趣旨ナリト解ス 外交的打開シ努ム 出来スハ戦争ヲヤル意味ト解ス (中略)海軍大臣 気持ハ議長ハ同一ナリ議長 明白トナレリ 統帥部モ海軍大臣ト同様ト信シ安心セリ以上に引用した「田中新一中将業務日誌」の中で注目すべきは、統帥部、陸軍と政府が対立したという東條英機などの手記とは異なり、出席者の中で完全な一致をみたと記されている事である。同日御前会議議長であった原枢密院議長は、「首相ノ努力ヲ多トスル」と述べ、外交では難局の打開が出来ないので戦争準備をするものとしてこれを了解している。原議長による席上の発言では、〈戦争の決意をし、外交は付け足りである。戦争はやむを得ない、できるなら外交をやってみる、戦争主、外交従と見えるが、実は外交手段を取るなかで戦争準備を行うという趣旨と理解する。外交的打開に努めるが出来なければ戦争をやるという意味と解する〉とかつ法廷に立って武藤章と対立しただけに、戦後は黙して語らなかったが、参謀本部在籍時の田中は詳しい日誌を残している。昭和一六年九月当時、参謀本部第一部長であった田中新一は、「日誌」において、以下の様な御前会議記録を残している。米参戦ノ場合ノ解釈・積極的参戦ノ防止カ防衛自衛・米参戦ノ場合、三国條約ノ態度・「米参戦トハ日本参戦」は解釈窮屈・「情勢ノ打開タル場合」詮索云々ノ件ハ三国協議トナリアリ・窮屈ニ解釈スヘキニアラス総テ本文ノ如クシタルモノニテ精神的解釈ニアラス、法文的解釈ナリ (中略)議長(原枢密院総裁- 筆者注)外交ハ難局打開ハ出来ヌ 近衛ノ努力ヲ多トスル(近衛支援)戦争準備ヲスルモノト了解ス 戦争決意 外交ハ付ケタリトナリアリ「自存自衛 併行外交 條件 決意」 戦争ハ已ムヲ得ス 出来ル