高知論叢107号

高知論叢107号 page 126/180

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49 高知論叢 第107号会議ニテ御質問相成度思召ニテ種々御下問アリタルヲ以テ余トシテハ御疑問ノ重要ナル点ハ原枢相ニ於テ質問スベキ筈ナレバ陛下トシテハ最後ニ今回ノ決定ハ国運ヲ賭シテノ戦争トモナルベキ重大ナル....

49 高知論叢 第107号会議ニテ御質問相成度思召ニテ種々御下問アリタルヲ以テ余トシテハ御疑問ノ重要ナル点ハ原枢相ニ於テ質問スベキ筈ナレバ陛下トシテハ最後ニ今回ノ決定ハ国運ヲ賭シテノ戦争トモナルベキ重大ナル決定ナレハ統帥部ニ於テモ外交工作ノ成功ヲ斎スベク全幅ノ協力ヲナスベシトノ意味ノ御警告ヲ御遊コトガ最モ可然カト奉答ス十時 橋本警保局長来訪治安状況ヲ聴ク侍従職ニ於テ東宮御教育ニ関スル会議アリ出席ス十二時四十分 武官長ト御前会議ニツイテ懇談ス一時十分ヨリ一時三十分迄拝謁 御前会議ノ模様ニツキ御話アリ 原議長ノ外交工作ヲ主トスルノ趣旨ナリヤ云々ノ質問ニ対シ 海軍大臣ヨリ答弁シ 統帥部ハ発言セザリシニ対シ 最後ニ御発言アリ 明治天皇ノ御製『四方ノ海』ノ御歌ヲ御引用ニ相成リ外交工作ニ全幅ノ協力ヲナスベキ旨仰セラレタル旨奉ル」以上が昭和十六年九月六日の日記の全文である。翻刻と原文を照合しても誤りはない。また前後の筆跡や続き具合と照合しても、後日書かれたものではなく、当日書かれたものであろう。2.『木戸幸一日記』(昭和一六年九月六日付)の解釈本稿で問題とすることは二つある。第一に、「原議長ノ外交工作ヲ主トスルノ趣旨ナリヤ云々ノ質問ニ対シ 海軍大臣ヨリ答弁シ 統帥部ハ発言セザリシ」は後述する田中新一参謀本部第一部長の御前会議メモとは異なっている。第二に、しばしば引用されてきた以下の天皇による発言の真偽である。「統帥部ハ発言セザリシニ対シ 最後ニ御発言アリ 明治天皇ノ御製『四方ノ海』ノ御歌ヲ御引用ニ相成リ外交工作ニ全幅ノ協力ヲナスベキ旨仰セラレタル旨奉ル」本節で問題とすることはこの天皇の発言である。この筋書きは軍人が作文したことは考えにくく、木戸の発案である事は間違いない。『木戸日記』の昭和十六年九月六日付末尾の語「奉ル」について、『木戸日記』を引用した者が、原典や復刻版には記載がない「奉ママ」「旨マ奉マル」と解釈してきた。そして以下の様な木戸の供述や近衛文麿の手記、「上奏時御下問奉答綴」を典拠にして、御前会議における天皇の発言を、