高知論叢107号

高知論叢107号 page 131/180

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日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究44五.内務大臣の報告では、日米交渉に関する国民の動向並びに治安上の措置について報告した。六.統帥部が、日本の戦時における国力と経済力の推計に関する報告を....

日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究44五.内務大臣の報告では、日米交渉に関する国民の動向並びに治安上の措置について報告した。六.統帥部が、日本の戦時における国力と経済力の推計に関する報告を行った。「第六回御前会議決定:帝国国策遂行要領、対米英蘭戦準備を概ね一〇月下旬を目途に完整」なる文章で締めくくられた。以上が議事要録であるが、同議事録末尾に、「陛下ヨリ御言葉アリ(御下問綴ニ譲ル)」とある。この議事録は、第二〇班タイピストの筆記によるものであるが、タイプ印字された議事録が後日ペンと筆で修正を入れている。筆跡から二〇班班長有末次であったと断定できる。議事録に使われた用紙は、日本標準規格B四とあり、近衛手記と同じ規格の用紙である。昭和十六年九月六日「御前会議記録」には有末の印が附されており、同資料は第二〇班において書かれ、かつ保存されたものである。日本標準規格(JES)の用紙は一九二一年から四一年まで流通しており、一九三九年から四五年は臨時日本標準規格となった。戦後一九四九年に至って日本標準規格(JES)は日本工業規格(JIS)となる。議事録や近衛手記が清書された日本標準規格B四用紙は、陸軍参謀本部が使用した臨時日本標準規格である。後述する近衛手記も御前会議と同様に参謀本部の手によって清書されたものであろう。2.その後の御前会議記録九月六日の御前会議の後、同年一一月五日第七回御前会議・大本営政府連絡会議において、帝国国策遂行要領決定し、「開戦を辞せざる決意のもとに外交交渉する事」が決められ、第八回は同年一二月一日、対米英蘭開戦が決定されたとされてきた。極東軍事裁判の判事に対して一一月五日の御前会議について誰も一様に口を閉ざして話さなかった、と言われてきた三五。ところが、実際は九月六日から一二月一日までの間に少なくとも二六回の大本営政府連絡会議が開かれている。極東軍事裁判の記録にはその間の会議に関する取り調べは特段なされなかったが、開戦に向けた極めて戦略的な会議であった。参謀本部の資料によると、