高知論叢107号

高知論叢107号 page 141/180

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日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究34資料七「上奏時御下問奉答綴」ペン書きの部分(原四郎記)に対して、「機密戦争日誌」は戦後清書された。原四郎三二は昭和一六年の時期において実務を担っており....

日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究34資料七「上奏時御下問奉答綴」ペン書きの部分(原四郎記)に対して、「機密戦争日誌」は戦後清書された。原四郎三二は昭和一六年の時期において実務を担っており、ペン書きで毎日日誌を書く役割であった。しかし戦後に清書された「機密戦争日誌」は旧上下官にかかわらず、交代で筆記者を変えていることも、この時期において旧陸軍からの職務に変化があったことを示している。以下原四郎筆記による「上奏時御下問奉答綴」ペン書きの一部を翻刻した。杉山・永野総長ノ申シマシタノト全至同シテ御座イマス此日原議長ノ質問ニ對シテハ 杉山総長カ解答スヘク将ニ椅子ヲ立タントセル時ニ 及川大佐カ起立答弁セシヲ以テ原議長は「及川大佐ノ答弁アリシモ大本営政府ハ懇請セラレタル結果故 統帥部モ及川大佐ト同意見ト解シ質問打切ル」トテ両総長ノ答解ヲ不要トスル発言ヲナセルヲ以テ 敢テ発言セサリシ次第ナリシモ直接「遺憾ナリ」トノオ言葉アリシハ恐懼ノ至ナリ 恐察スルニ極力外交ニヨリ目的達成ニ努力スヘキ御思召ナルコトハ鮮カラリ 又統帥部カ何カ戦争ヲ主スルコトヲ考ヘ居ルニアラスヤト オ考ヘカトモ相察セラルゝ節ナシトセズ「上奏時御下問奉答綴」のペン書きの部分はすべて原四郎が記している。そのことは、「機密戦争日誌」における原四郎署名入り清書原稿(資料二・三)と筆跡が一致することから確実である。但し、「上奏時御下問奉答綴」のペン書きの部分は、後日清書された「機密戦争日誌」と異なり、筆跡、様式とも整った書式ではなく、走り書きの部分がある。その理由は両日誌の書かれた経緯が異なるからである。「上奏時御下問奉答綴」は上奏時直後に記されたの