高知論叢107号

高知論叢107号 page 152/180

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23 高知論叢 第107号者が異なり、年末に筆記者の署名がある。しかも例え同一人物が書いたとしても、日誌であれば日によって、筆記具によっても筆跡が微妙に異なる筈であるが、一年分を一気に清書したとしか考えられ....

23 高知論叢 第107号者が異なり、年末に筆記者の署名がある。しかも例え同一人物が書いたとしても、日誌であれば日によって、筆記具によっても筆跡が微妙に異なる筈であるが、一年分を一気に清書したとしか考えられない様な筆跡の連続性がある。「機密戦争日誌」は占領軍の査察を受ける際に、裁判に差し障りがない様な箇所を清書したものであろう。「機密戦争日誌」という表題も作為的な表題である。参謀本部第二〇班の記録なら「昭和日記」が本来の表題であろう。刊行された『機密戦争日誌上』(錦正社平成一〇年)は『大東亜戦争の終局』から転載されたものである。但し原本といえるものは、本稿で示した、防衛省に所蔵されたものであるが、同書自体が、「昭和日記」なる原本を筆記したものであり、「昭和日記」の表紙を変えただけではなく、戦後清書されたものである。九月六日「幾多の秘史あるが如きも茲に記載せず」この文章も後日当時を回顧して「秘史」として日誌が書かれた事を暗示しており、当日の記録ではないことを自ら告白した様なものである。3.「機密戦争日誌」と他資料の比較昭和十六年九月六日の御前会議記録には、「杉山メモ」には「多くの秘史」があるとされてきたが、明治天皇御歌を引用して、平和を希求したとされる天皇の発言については誰しも疑問を持つものはおらず、これに疑問を持つことは開戦秘話の中でも秘中の秘とされてきた。但し、参謀本部第二〇班が作成した「機密戦争日誌」や「御前会議議事録」には天皇の発言をほのめかすような記述はない。資料一「機密戦争日誌」昭和十六年九月六日における「今日の御前会議は特に決まったという感じ湧き来たらず」の一文は種村佐孝『大本営機密日誌』の文章と酷似している。以下は「機密戦争日誌」と種村佐孝『大本営機密日誌』の同日の文章を比較しよう。参謀本部「機密戦争日誌」昭和十六年九月六日一.午前十時ヨリ十二時ニ至ル間御前会議決定ス 会議ノ模様ニ関シテハ別冊ニ依ル 正ニ歴史的御前会議ニシテ幾多ノ秘史アルガ如キモ茲ニ記載セズ、対米決意ハ前途遼遠ナルヲ思ハシムモノアリ