高知論叢107号

高知論叢107号 page 164/180

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11 高知論叢 第107号母三隻戦艦一隻ヲ基マ幹マト致シマスル目標(手前ニ偵知シタ部隊ト思ハレマスルガ)ヲ捕捉、果敢ナル攻撃ヲ加ヘ、大型空母ニ三機、中型空母ニ一機命中致シ夫々大火災停止スルノ認メテ居リマス、....

11 高知論叢 第107号母三隻戦艦一隻ヲ基マ幹マト致シマスル目標(手前ニ偵知シタ部隊ト思ハレマスルガ)ヲ捕捉、果敢ナル攻撃ヲ加ヘ、大型空母ニ三機、中型空母ニ一機命中致シ夫々大火災停止スルノ認メテ居リマス、他ノ二機ハ小型空母及戦艦ニ夫々命中炸裂シマシタガ効果ハ確認致シテ居リマセヌ…現在迄ニ判明致シマシタル神風隊ノ挙ゲマシタ戦果ハ既ニ上聞ニ達シマシタモノモ含ミマシテ撃沈空母二隻、巡洋艦及輸送船各一隻、大破炎上空母四隻、巡洋船及船型不詳各二隻、中小破空母三隻、戦艦二隻、輸送船一隻ニ達シテ居リマス」しかし、これ以降の神風突撃隊の戦果について具体的な報告は乏しかった。また戦況についても「不明」「被害ナシ」「被害軽微ノ模様」「相當ノ戦果」など曖昧な奏上が多く、戦況の上奏も国民への発表と大差ないものであった。「陸軍本省ニ依レバ敵機動部隊ハパレンバンノ南南西二十〇浬付近ニ在リテ〇九四五並ニ一〇三〇各五十機ノ艦上機パレンバンニ来襲シ所在部隊ハ之ヲ撃墜シ相當ノ戦果ヲ挙ゲタル模様ナリ 硫黄島被害ハ軽微ノ模様ナリ」一九昭和二〇年六月一日 菊水九号作戦では「戦闘機延九十機沖縄泊地上空、制空ノ下九九艦爆全力ヲ以テ同付近艦攻撃ヲ実施、被害ナシ、戦果、撃墜、撃破、南西諸島、台湾、中部太平洋、南西太平洋 戦果不明」二〇というものであり、相当な被害が連日あった昭和二〇年六月以降の奏上も「被害ナシ」とする報告が多かった。以上のように、被害の過少報告は、統帥権者が終戦への決断を遅らせる結果となった。(三)『侍従武官長奈良武次日記』にみる帷幄上奏1.昭和天皇への奏上系統図昭和初期における公表されている奏上記録は『侍従武官長奈良武次日記』が最も詳細な記録である。天皇への日常の上奏は侍従武官を通じた内奏、伝奏の形式で行われたことが、日記に記されている。同日記によると軍務、作戦に関する事項は侍従武官長が上奏前に必ず上奏者と打ち合わせをし、その結果を内奏している。上奏される場合、武官長が必ず同席し、武官長から伝奏される場合も多かった。同日記はあくまで軍務に関する記述が中心であるが政務に関しても記録されている。『侍従武官長奈良武次日記』には、昭和初期において、出兵は国務大臣の輔弼の範囲内で