高知論叢107号

高知論叢107号 page 167/180

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日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究8必ず設置された大本営を除いて、常設された大本営設置期間は、明治天皇在位期間中には三年八ヶ月であったのに対して、昭和天皇在位期間では八年九ヶ月であった。....

日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究8必ず設置された大本営を除いて、常設された大本営設置期間は、明治天皇在位期間中には三年八ヶ月であったのに対して、昭和天皇在位期間では八年九ヶ月であった。大本営設置を戦時に限定していた大本営条例は、事変でも設置可能にした大本営令(昭和一二年軍令第一号)となった。但し、統帥権者としての天皇と軍、政府との関係は、平時と戦時において大きな相違がなかった。すなわち、大本営設置如何に拘わらず親裁式そのものは何ら変わる所はなかったことは、次節に示す大本営設置前における『侍従武官長奈良武次日記』と戦時大本営法施行後との対比によって知ることができる。以下に戦時大本営法施行後の昭和一六年以降における上奏の事例を示そう。昭和一六年九月八日参謀本部が起案した戦時見通しは参謀次長の名で課長以下が起案した奏答資料として残っている。「對米英蘭戦争ニ於ケル作戦的見通シ 塚田参謀本部次長印 服部課長印 高山主任印」一二がそれである。昭和一六年一二月二日 上奏 参謀総長からの上奏文「日獨伊軍事協定ニ関スル件」一三には外交に関わる事項であるが大臣の印はなかった。昭和一六年六月参謀本部による上奏「南方作戦ニ関スル件」一四は 参謀総長・杉山印、参謀次長・塚田印、部長・印はあるが大臣印はなかった。昭和一六年一一月五日参謀本部から提出された「對米英蘭戦争ニ伴フ帝國陸軍作戦ニ関スル件ニ関スル件御説明案」「對英米蘭戦争ニ伴フ帝國軍作戦計畫ノ概要」一五には両方作戦準備ニ関シ命令相成度件とあり、以下のような書式で奏上された。同稟議書には陸軍大臣の欄はあるが、そこには印は附されず空白であった。両文書は陸軍大臣、次官の決裁を経ないで提出されている。また陸海軍統帥部別々の書式であり、連隊部長として、海軍軍令部長の印を付した場合があったが、専ら陸海軍統帥部ごとの稟議を経て上奏に附された。