高知論叢107号

高知論叢107号 page 170/180

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5 高知論叢 第107号した時期は一八八七年(明治二十年)六月二日、「監軍部条例(勅令第一八号)」が制定された事を嚆矢とする。監軍は、勅命により検閲使として軍隊を検閲する役割も担った七。防衛省防衛研究所戦....

5 高知論叢 第107号した時期は一八八七年(明治二十年)六月二日、「監軍部条例(勅令第一八号)」が制定された事を嚆矢とする。監軍は、勅命により検閲使として軍隊を検閲する役割も担った七。防衛省防衛研究所戦史研究センター史料室の千代田史料には、「日清日露前後上奏書類」の中に明治天皇への特命検閲が保管されている。各部隊の司令官から、佐官以上の考課について要点のみが上質紙に転記されて恒例検閲として奏上されている。以下は横須賀鎮守司令長官上村彦之丞の名で提出した海軍中佐K氏の人事評価に関する奏上書八の一例である。 奏上書 横須賀鎮守司令長官明治三九年恒例検閲ノ実況ヲ具シ謹ミテ奏上ス一二月二十日横須賀鎮守司令長官正四位勲一等功四級 上村彦之丞海軍中佐正六位勲三等功四級K軍紀風紀ハ厳正ナリ 教育訓練ハ適良(可)ナリ 出師準備ハ(概ネ)整ヘリ 事務ハ整頓タリ 服務ハ勤勉(精励)ナリ上記の奏上書は海軍横須賀鎮守士官の例であるが、全員が適良、可、精励、などの穏当な文言が記入されている。奏上書は、厳格に士官の評価を行った結果をそのまま報告したものではなく、全員が士官として適正な業務を執行したとする報告であった。海軍の部隊ごとの評価に関しては、整備中の艦船について、以下のように「水雷団、軍艦宗谷 鈴鹿作戦準備ハ復旧工事未治ニテ未ダ整ハス」と奏上されている。将官の進級、評価を奏上する実権を持っていた部局は陸海軍人事局、就中人事課長、局長であった。同年海軍人事課長が書いた、進級会議における人事局長説明の草稿によれば、戦艦比叡艦長に対する評価は「正直、几帳面、至誠、奉公、だが意気に乏しい」金剛艦長は「事務的才至誠、奉公の風あり」九という評価を行った。人事内局は将官、艦船艦長に対しても厳しい評価を行った。本省の人事部局は中将以上の人事に関しても大きな発言力を持っていたことが、この草稿からも知る事が出来る。2.日露戦役後の検閲明治海軍の中でひと際光彩を放った戦果の一つは、日露