高知論叢107号

高知論叢107号 page 171/180

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日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究4課長、参謀本部、軍令部、司令官、一般の将官、在郷軍人を含む幅広い軍関係者が帷幄上奏を行った。帷幄上奏には侍従武官長の役割が大きく、あらゆる軍に関する上....

日米開戦前の御前会議と帷幄上奏に関する書誌的研究4課長、参謀本部、軍令部、司令官、一般の将官、在郷軍人を含む幅広い軍関係者が帷幄上奏を行った。帷幄上奏には侍従武官長の役割が大きく、あらゆる軍に関する上奏は侍従武官長によって取り継がれた。侍従武官長以下の侍従武官府には、有能な陸海軍将校が天皇の意向を汲んで任用された。侍従武官設置は明治初年において、参議から提案され、侍従武官長は陸軍少将以上が任用された。以後武官長は慣例として陸軍から選出され、海軍から任用されたのは次長までであった四。侍従武官長の任命権者は内閣総理大臣であったが、文官は侍従武官の人事には実質的に関与できなかった。宮中に武官が拝謁する際に帷幄上奏を行った場合もある。その他、異例の帷幄上奏もあった。それは、行幸先における上奏である。行幸先において軍関係者や地方官吏らは拝謁を賜るとともに、天皇は彼らから奏聞した際に直接上奏されることがあった。その理由は、行幸場所の御座所において大本営が設置されたからであった。軍政、軍功、作戦等の重要事項は、常に統帥者に奏上された。輝かしい軍功、戦果については詳細な絵図を含めて奏上した。帷幄上奏は決して形式的なものではなく不裁可の場合や、叱責がなされた事もあった事が、『奈良武次侍従武官長日記』に記されている。各部隊、師団、連隊から提出される検閲書類は膨大なものであったために、平時における通常の奏上や特命検閲使による上奏は、要点のみ上質紙に楷書で書かれたものが奏聞され、かつ上奏された。軍への検閲は憲法第十二条で定められた親裁事項の一つであり、勅令によって定められた五。特命検閲は帷幄上奏の中でも最も定例化した重要な統帥事項であり、陸海軍別々に行われた。特命検閲に際して、陸海軍将官が勅命を奉じて特命検閲使となり、その結果がとりまとめて上奏された六。特命検閲使には、検閲使随員として所要の士官、高等文官、軍属若干名が任じられ、海軍においては検閲を行なうために海軍大臣と協議の上、艦船を便宜の所に招致することができた。特命検閲使は、検閲の実況、検閲の意見を復奏し、検閲の成績、訓示を、海軍は海軍大臣に、陸軍は陸軍大臣、参謀総長、教育総監に移牒した。軍への検閲は明治初年から行われたが、制度として確立