高知論叢107号

高知論叢107号 page 38/180

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36 高知論叢 第107号退院可能であるといえるか,疑問が残る。また,現在の診療報酬・介護報酬が十分な療養・看護・介護を実施できる内容・水準にないなど,重要な問題が指摘された。現在の状況において,療養病床を....

36 高知論叢 第107号退院可能であるといえるか,疑問が残る。また,現在の診療報酬・介護報酬が十分な療養・看護・介護を実施できる内容・水準にないなど,重要な問題が指摘された。現在の状況において,療養病床をはじめ老人保健施設や介護福祉施設においても適切な療養,看護,介護が受けられるか,さらなる検討が必要である。療養病床の転換の意向については,以前から転換を希望する施設は皆無である一方,回答施設の76.9%が転換を希望していないことが明らかとなった。また,転換の現状についても,すでに転換したあるいは転換を決定した施設が7.6%であるのに対し,転換しないあるいは未定である施設が合わせて88.5%を占め,病床転換はほとんど進んでいない。一方,療養病床入院患者のうち,退院可能な患者が一定存在することは事実であるものの,退院がその患者にとって望ましいとはいえない場合があることがわかった。このことは,退院可能だと判断される患者のうち約6割は退院後の行き先が決まっていないこととも関連し,現実的な問題としてきわめて重要である。高知県の療養病床は7,198床あるのに対し,介護保険施設は介護老人保健施設で2,061床,介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で3,598床にとどまり4,受け皿となる介護施設等の整備が焦眉の課題である。その一方で今後は,在宅生活を前提にした地域ケアをどのように整備し確立すべきか,さらに多くの検証されるべき課題がある。以下では,高齢化と過疎化が進む中山間地のうち「無医地区」に目を向け,医療施設のない地域の住民の医療ニーズやアクセスの現状と問題点を検討する。第3章 高知県における「無医地区」の現状1.高知県における「無医地区」の概要「無医地区」とは,「医療機関のない地域で,当該地区の中心的な場所を起点として,おおむね半径4 ㎞の区域内に50人以上が居住している地区であって,4 高橋泰,江口成美「地域の医療提供体制現状と将来 都道府県別・二次医療圏データ集 」日医総研ワーキングペーパー№269,2012年11月,参照