高知論叢107号

高知論叢107号 page 40/180

電子ブックを開く

このページは 高知論叢107号 の電子ブックに掲載されている40ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
38 高知論叢 第107号促進特別措置法および山村振興法が適用されている地域である。7 地区の人口は合計870人(2009年10月末時点)であり,仁淀川町人口の13.1%を占める。地区ごとの高齢者世帯の割合は46.8~89.0%....

38 高知論叢 第107号促進特別措置法および山村振興法が適用されている地域である。7 地区の人口は合計870人(2009年10月末時点)であり,仁淀川町人口の13.1%を占める。地区ごとの高齢者世帯の割合は46.8~89.0%であり,今回はこのうちの2 地区でヒアリングを行った。1 つは比較的高齢者世帯の割合が少なく(55.1%),近隣に日用品を揃えた商店などもある(以下,「A地区」とする)。もう1 つは,高齢者世帯の割合が高く(73.2%),町の幹線道路からはかなり奥まった集落である(以下「B地区」とする)。以下では,各地区に居住する計7 人の高齢者を対象に行ったヒアリングの結果から地区住民の生活状況や健康状態,医療ニーズ,医療アクセスの現状を検討する。〈A地区〉60~70歳代の比較的若い住民が調査対象であったこともあり,日常の買い物はほとんどの場合,週に数回自ら自家用車を運転して行ったり,あわせてスーパーの移動販売や生協の宅配サービスなども利用している。野菜などを自家栽培したり,お茶やゆずなどを共同栽培したりもしている。しかし,生鮮食品や欲しいものがすぐに手に入らない,また,衣料品などは他の市や町まで買いに行く必要があるなど,不便ではある。A地区の調査対象者は要介護認定を受けておらず(要介護状態ではない),持病がなく通院していない,あるいは,投薬や定期健診のため通院が必要な場合,自家用車を運転して通院することが可能である。厚生労働省の「無医地区等調査」によると,最寄りの医療機関までの距離は約25km,自動車での所要時間は約45分,最寄りの診療所までの距離は約11kmで所要時間は約30分である。医療機関までの交通手段が限られ,また移動に時間がかかるなど,受診の際には不便もある。特に不安が強いのが,独居高齢者である。できるだけ普段から自宅に人を招き入れたり,近隣の住民も毎日のように声をかけ,見守る関係はあるものの,緊急事態に備えるものとはなっていない。「最後は病院で迎えたい」,「高知市に移住を考えている」などの声も聞かれた。